ビジネス

2017.03.13

ITスタートアップの組織的「稚拙さ」 ウーバーの危機で露呈

ウーバーのトラビス・カラニックCEO(Photo by Michel Porro / gettyimages)

ウーバーのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)は先週、自身の右腕となる最高執行責任者(COO)を「積極的に」探していると発表した。焦るのも無理はない。同社はここ最近、次から次へとスキャンダルに見舞われているからだ。

先月には、自社のベテラン運転手と報酬をめぐり口論になったカラニックが暴言を放つ場面を捉えた映像が撮影された。また同時期には、同社の人事部が職場でのセクハラを組織的に隠蔽(いんぺい)していた疑惑が、元従業員の女性エンジニアの告発によって明るみに出た。

さらにウーバーは、グーグルから自動運転技術に関する企業秘密を盗んだとして訴えられ、裁判所から自動運転車の開発差し止めを命じられる恐れに直面している。

これに追い打ちをかけるように発覚したのが、ウーバーが内部で使用していた「グレイボール」と呼ばれるソフトウエアの存在だ。同社はこれを使い、サービス提供が禁止されているパリなどの都市で警官が使うアプリに、実際は存在しない「幽霊車両」を表示させ、取り締まりを回避していた。

ウーバーは、成長と利益のためならどんなこともいとわないのか。「素早く行動し破壊する」は、肝に銘じるべき唯一のモットーなのだろうか。

グレイナーの企業成長モデル

企業の成長過程を5組の原動力と危機からなる段階に分けた米経営学者ラリー・E・グレイナーの1972年の論文は、今や企業経営者の必読書となっている。当時の米国では、戦後20年の高度成長期を経たフォードやゼネラル・エレクトリック(GE)などの大企業が危機に陥っていた。

こうした企業は世界各地に進出していたが、現地の経営陣は高い自由度をもって事業を運営していたため、本社は一貫した戦略を効果的に遂行できず、日本企業などの台頭に対抗できずにいた。

経済学者の間では、米国の競争力低下は避けられないとの見方が広がっていたが、グレイナーの考えは違った。彼は、こうした企業は単に成長過程にあると考えたのだ。
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編集・翻訳=遠藤宗生

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