ビジネス

2017.03.14

大手アクセラレータCEOに聞く 「選ばれる起業家」の特徴

テックスターズの共同創業者兼共同CEOのデビッド・ブラウン。自身も連続起業家で、1社目のピンポイント・テクノロジーズはZOLLメディカルに売却後、旭化成に買収されている。

起業支援プログラムを運営するアクセラレータの「Techstars(テックスターズ)」。国境や業界を超えて展開する”グローバル・アクセラレータ”を志向する理由をデビッド・ブラウンCEOに訊いた。


──テックスターズが生まれたのは2006年。07年のプログラム開始から早10年ですね。

当時、アクセラレータという言葉すら存在しませんでした。最近、過去に作ったポッドキャストを聞き直したのですが、そこでは「ハッチェリー(孵化場)」と呼んでいましたよ。

まだYコンビネータもボストンを拠点にしており、現在の投資型アクセラレータではなく、メンターシップに近いものだったと思います。少なくとも、今日のアクセラレータの特徴として知られる1. デモ・デイ(投資家プレゼンテーション日)、2. 3カ月間のブートキャンプ、3. エクイティ交換はなかったですね。

──世界各地で展開していますが、健全なスタートアップ環境を育てるポイントとは。

3つほどあります。まず、世界のどこであっても素晴らしい起業家は生まれているということです。シリコンバレーだけが、その秘訣を知っている訳ではありません。

次に、会社はどこにでも作れます。例えば、私たちがいるコロラド州ボルダーは人口10万人の街ですが、クラウドメール配信企業「SendGrid(センドグリッド)」やロボティクス企業「Sphero(スフィロ)」のような有名企業がいくつもあります。大事なのは、「会社を作るのにどこかへ移る必要はない」ということです。暮らしている街で会社を育てることはできます。

最後に、エコシステムによって成熟度に差がある、ということ。その最たる例がシリコンバレーです。成熟していますし、メンターも数多くいます。起業家も多く、スタートアップにとっては恵まれた環境です。ニューヨークやシカゴ、ロンドン、ベルリン、テルアビブもまた同じです。エコシステムは時間と共に成長しますので、今後、世界中でさまざまな街がスタートアップ・ハブに成長するでしょう。

テックスターズの“選考基準”

──競争率が高いプログラムには、どのようなスタートアップが申し込んでくるのでしょう。

申し込んでくるのは、主にハードウェアかソフトウェア関連の企業ですね。プログラムもそうした企業を対象に組まれており、私たちが提供する資金や3カ月の養成期間も適しているからです。

──プログラムに参加するスタートアップは、どのような基準で選んでいるのですか?

冗談半分で使っている「6つの基準」なるものがあります。

それは、「Team, Team, Team, Market, Progress, Idea(チーム、チーム、チーム、マーケット、進歩、アイデア)」というものです。ここで重要なのは、「アイデアそのものよりも、人の方が大事」という点。大切なので、「チーム」を3度も繰り返しています。

人が重要なのは、優秀な人々ならば凡庸なアイデアをより良くできるからです。逆に、どんなに素晴らしいアイデアであっても、平凡なチームではそれを十二分に生かすことはできません。

マーケットの規模や可能性も重要です。進歩というのは、起業家たちが「短時間で何かを成し遂げられる」という信念を持っているかどうか、という意味です。プロトタイプ(試作品)を手早く作れるかどうかは、その人の能力をはかる上でよいものさしになります。

そして、最後にアイデア。もちろん大事ですが、重要性でいえば他の基準に劣ります。

──選ばれる「チーム」の特徴とは?

問題解決に対して情熱を抱いていることが多いですね。例えば、センドグリッドは技術畑以外ではあまり知られていません。でも、世界におけるeメールの驚異的な量を処理しています。創業者たちはメール配信の技術的な課題を見つけ、改善したいと考えたのです。成功する起業家の多くは、「直したい」と思う問題を見つけていますね。
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インタビュー=フォーブス ジャパン編集部 、写真=レベッカ・スタンフ

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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