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2017.03.13

世界トップを目指すベンチャーキャピタルの新たな挑戦

グローバル・ブレインの百合本安彦社長(前列中央左)と同社の投資先12社の経営陣。


GBの組織体制は独立系VCとして最大規模、専門人材30名から成っている。GBがベンチャー育成に強い理由が、まさにこの組織力にあり、成長ステージに合わせたハンズオン支援を実現している。

GBの専門性を縦軸、支援メニューを横軸で考えれば、まず“横”の広がりが圧倒的だ。経営支援、営業支援、PR、人材採用、バックオフィスなど、幅広い業務支援を行っており、ベンチャー企業が経営に集中できるよう、GBが無料でこれらを引き受けている。

「GBのベンチャーキャピタリストは、彼らの良き伴侶、寄り添う相手となるように心がけている。これらの支援は日系VCで最も充実しているが、今後さらに強化していく」

ビジネスデベロップメントにおいては、主にビジネスモデルやオペレーションの構築、大企業とのアライアンス推進など、ベンチャー企業の成長を支援する仕組みを作り上げている。

他にも、月に1回のベンチャー企業と大企業のマッチングイベント「ナイトピッチ」、大企業1社に対してベンチャー企業数社がピッチする「イグナイトピッチ」などを開催している。GBが持つ150社を超える大企業とのネットワークを最大限に活用し、ベンチャー企業とのアライアンスをきめ細かくサポート、その成長を加速させている。

一方、“縦”については、各事業領域を専門人材一人ひとりが担当することで対応している。例えば、AI領域の担当者は、世界各国のAIベンチャー企業をカバーする。その担当者が投資を決定すれば、戦略、オペレーション、経理、総務、人事の専門人材が“横”から入っていき、“縦と横”で徹底支援していく。

GBはこれまで、IPO(新規株式公開)を9件、M&A(合併・買収)を26件成功させた。その中には、KDDIが買収したAppBroadCast、アドウェイズが買収したMist Technologiesなどが含まれており、累積Exit率は43%に達した。つまり、投資先の2社に1社がExitしている状況であり、業界平均を大きく上回る数字だ。

現在、GBの出資先の7割が日本のベンチャー企業で構成されているが、積極的にグローバル展開を進めるなかで、GBが日々会うベンチャー企業の半分以上は既に海外勢が占めるという。

GBは17年、LPをはじめとした大企業との連携強化、年間20件・50億円の積極投資、韓国、イスラエルでのプレゼンス最大化に動いていく。20年には、運用総額1,000億円突破、大企業とベンチャー企業とのハブ機能強化、さらなるグローバル展開を行い、グローバルティアワン(Tier1)VCの仲間入りを目指している。

「金融の世界では、日本発はまだ世界ナンバーワンを取れていません。我々はまず、VC業界でそれを実現したいと考えています」

イノベーション・エコシステムのハブ役として、壮大な青写真を描くグローバル・ブレイン。高い志を胸に抱き、世界一のベンチャーキャピタルへ向かって爆進し続けている。


グローバル・ブレイン◎日本を代表する独立系ベンチャーキャピタルのひとつ。百合本安彦CEOが1998年設立し、現在までに9本のファンド(累計運用額約600億円)を運用。日本のみならず、サンフランシスコ、韓国、シンガポールにも拠点を持ち、グローバル展開をしている。30名の専門人材を擁し、フェーズに合わせたハンズオン支援を強みとし、これまでIPO9件、M&A26件を誇る。

GB-VI号◎2016年12月に設立した「グローバル・ブレイン6号投資事業有限責任組合」(運用総額200億円程度)。LP出資者には、クールジャパン機構、ジェイティービー、三井住友銀行、住友林業、電通国際情報サービス、KODENホールディングス、KDDIによるCVCファンド「KDDI Open Innovation Fund」といった企業や大学、海外機関投資家がいる。産学連携を含むグローバルなオープンイノベーションを創出する。

文=土橋克寿 写真=セドリック・ディラドリアン

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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