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2017.03.13

世界トップを目指すベンチャーキャピタルの新たな挑戦

グローバル・ブレインの百合本安彦社長(前列中央左)と同社の投資先12社の経営陣。


昨今の世界における投資スタイルの主流はハンズオンとは真逆のハンズオフだった。手間のかかるハンズオンは、多くのVCが避けるところだが、百合本は1998年のGB設立当初からこの姿勢にこだわり続けてきた。かかる手間以上に“利点”を多く感じているからだ。

「経営者と共通言語で話せるのが一番大きい」

ハンズオンを語る際、切っても切り離せないのが「リードインベスターとなること」である。リードVCは、資金調達の各ラウンドを仕切る立場で、GBは日本の投資案件の95%においてリードインベスターとなっており、これは業界平均10〜20%から大きくかけ離れた数字だ。

「リードVCは、経営者と二人三脚で経営する立場で、企業情報がかなり入ってくる。これがハンズオンにつながっていくし、一方でそういった情報がないとできない。だから、我々のなかでハンズオンとリードは同じ存在である」

リードインベスターでなくても、もちろん経営情報は入ってくる。しかし、そこで共有される情報量やスピードには大きな差が生じてしまう。投資先支援とパフォーマンスを追求するために百合本はリードにこだわっており、これが結果的に機関投資家からの評価、そして大型ファンド組成へとつながっている。

16年12月に開催されたグローバル・ブレイン・アライアンス・フォーラム、GB投資先のうち、今年最も成長した企業を表彰する「Global Brain Five-Star Startup Award」には、スタートアップ12社が並んでいた。

GBがシード段階から投資している、日本唯一のユニコーン企業であるフリマアプリのメルカリや、印刷のシェアリングエコノミー事業を展開しながらインド・東南アジア企業への出資も加速させているラクスルなどをはじめ、現在の日本のスタートアップシーンを牽引する企業たちだ。こうした企業たちから選ばれる存在であることこそGBが優れたVCである証左と言えるのだ。

着実に進化し続けるファンド組成と海外展開

GBが運営するファンドは、産業革新機構などが出資する「5号ファンド」、そしてCVCパートナーであるKDDIとの「KDDI Open Innovation Fund」(総額100億円)、同じく三井不動産との「31VENTURES Global Innovation Fund」(総額50億円)だった。13年に組成した5号ファンドは運用総額150億円、投資期間5年の予定だったが、これを2年半で全て使い切った。非常に投資環境が良く、一気に投資を行ったという。

そこで、5号の後継ファンドとして「6号ファンド」を16年12月に設立。運用総額200億円、投資期間10年。戦略的LP出資者には、クールジャパン機構、ジェイティービー、三井住友銀行が参画し、特に東京オリンピックを見据えた観光・インバウンド産業の競争力強化や社会課題解決を目指していく。

この他、同ファンドのLP出資者には、住友林業、電通国際情報サービス、KODENホールディングス、KDDIによるCVCファンドといった企業や大学、海外機関投資家等が参画しており、産学連携を含む新たなオープンイノベーションにも期待がかかる。

「我々は今後、国内外の大学、機関投資家などから資金調達することで、年間50億円ぐらいの資金をベンチャー企業へ安定的に提供したい。今回、その礎ができたと考えている」
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文=土橋克寿 写真=セドリック・ディラドリアン

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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