中国深センに対抗、香港で進化する次世代「医療テクノロジー」

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今年1月に香港で開催されたスタートアップイベント「スタート・ミー・アップ・イノベーション・フェスティバル」では、1週間にわたり様々なテーマが話し合われた。

一般的に香港は金融都市として有名で、近年は北京の中国政府からの規制圧力が高まってはいるものの、フィンテック分野のイノベーションは盛んだ。しかし、香港は中国の深センとの競争にもさらされている。深センのGDPは2015年に2690億ドル(約30兆円)に達し、香港のGDPの2740億ドル(2013年の数字)に迫っている。

深センではホワイトカラー人口が増加し、一人あたりGDPも上昇。深セン証券取引所では株価の上昇が続いている。ハードウェア分野のシリコンバレーと呼ばれる深センは、ドローンのDJIや、スマホ業界の巨人であるファーウェイが本拠を置き、近年では遺伝子分析を行うBGI等の先進的企業も現れた。

香港島から深センへの距離は電車でわずか75分。しかも、香港の人口は700万人で、深センがイノベーション都市としての存在感を増す中で、果たして香港はこれからどこに向かうべきなのかという議論が起きるのは当然だ。

そんな中、深センに比べ香港が一歩先を行くのがヘルステック領域のイノベーションだ。近年は韓国やタイに向かう医療ツアーも増加中だが、香港は次世代のヘルスケア分野のイノベーションで着実に存在感を増している。

先日開催されたイベント「ヘルステック・アジア」では香港の医療関係者らが、この都市の先進医療の取り組みを明らかにした。香港では医療データのデジタル化が急速に進み、数十に及ぶアプリが医療関係者や民間人の健康データ把握し、病院の予約や医療システムの効率的運用の面でも活かされている。近年、香港の医療システムは先進諸国の中でもトップレベルだ。

イベントではテレメディスン(遠隔治療)はもちろん、遺伝子分析を行うゲノミクス、微生物治療やバイオプリンティングといったテーマが盛んに議論され、不眠症治療を行うゴーグル型デバイスのSanaといった先進的デバイスも披露された。さらにVRマシンを用いて幻肢痛(難治性の疼痛)を改善する製品のプロトタイプも公開された。

社会の高齢化が進む中で、全く新しいヘルスケアテクノロジーへの需要が高まっている。米国の限られた都市で自動運転のテストが行われているように、将来的には香港がヘルスケア領域の実験場的役割を果たすのかもしれない。

ハイテク製品が世界のどこよりも安価で製造可能な深センの隣に位置する香港は、その地理的メリットを活かし、ヘルスケアテクノロジーの最先端を切り拓く可能性に満ちている。

編集=上田裕資

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