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世界の音楽クリエーターの数は、テクノロジーの発達によりかつてない規模に増加した。コンピューターの手を借りた作曲はもはや一般的だが、数社の企業が今、このプロセスを一変させようと試みている。

コンピューターによる楽曲生成の分野は急成長を遂げており、音楽の創作やライセンシングに変革をもたらそうとしている。中でも、AI(人工知能)による作曲の最前線を行くのが、米Amper Music、英Jukedeck、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)、そしてMagentaプロジェクトを進める米グーグルの4社だ。

うちニューヨークで設立されたAmper Musicは先週、シードラウンドで400万ドル(約4億5600万円)の資金調達に成功したと発表した。テクノロジーを駆使し音楽業界に切り込むこれら企業は、成功を収める大きな可能性を秘めている。

音楽ライセンシング業界は既に飽和状態にあり、音楽素材集、作曲サービス、インディーズレーベル、大手レコード会社など、さまざまな質・アプローチの楽曲を提供する売り手がしのぎを削っているのが現状だ。

AIを使ったアプローチがユニークなのは、コンピューターに創作プロセスの中心的役割を担わせることによって音楽をコモディティ(一般化が進み差別化が困難となった商品)化している点だ。

AIはコンテンツ制作者にとって非常に有益なツールとなり得る一方で、音楽業界にとっては未知の領域だ。ETC導入により料金所職員の身に起きたようなことが、AIの参入によって音楽界にも起きるのだろうか。AIの楽曲はオリジナル性をどう確保するのか。著作権の登録や使用料の徴収、クレジットといった、ビジネス面での懸案事項もある。

膨大な規模を誇る格安楽曲市場は拡大の一途をたどっており、ごく簡単な方法で小銭を集めるだけで成功を収めることが可能だろう。そこで浮上するのが、私たちは音楽作品(さらに言えば芸術一般)とどのように向き合い、評価するのかという疑問だ。

ユーチューブやGoPro(ゴープロ)などの普及により、誰もがコンテンツを生み出せる時代が訪れた一方で、超低予算のクリエーター層が誕生した。使用する音楽にこだわりたいものの、楽曲にサンドイッチ代以上の対価を支払えない人々だ。

一方で、音楽のライセンシングは非常に複雑であり、テクノロジーの参入を阻む壁となっている。メディアプラットフォームの数が増加し、コンテンツ配信が多様な進化を遂げる中、適切な音楽ライセンスを確保するには、法律上・手続き上における微妙な問題を多数クリアする必要がある。

ユーチューブ動画への楽曲使用一つとっても、著作権保有者との間で使用要件や期間、領域などさまざまな側面について合意に達しなければいけない。高い価値のある著作権に関する協議は、今後も人間同士で行うのが最もスムーズだろう。

私たちは今、コモディティとしての音楽が、買い手と売り手の双方に受け入れられる世界に生きている。AI音楽制作会社は適切な価格で十分な量の楽曲を提供さえすれば成功を収めるだろうと、私は思う。だが、オリジナル楽曲制作サービスは今後も決してAIに取って代わられることはないだろう。

翻訳・編集=遠藤宗生

 

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