ロート製薬 吉野俊昭 代表取締役社長兼COO


谷本:副業制度を始めてから出てきた課題はありましたか。

吉野:副業の第一条件は、本業に支障がでないこと。それは競合他社に勤務するというようなこと以外にも、先ほど挙げたような健康面も含んでいます。どれだけ熱意があっても、従業員の健康を優先して考えなければいけない。その点はきちんと線引きします。

人材の流出についてですが、今の時代は人材が流動的であることは当たり前です。これまでも制度の有無に関係なく、中途採用、退職者の例はありました。兼業した先で、個々の才能を伸ばすことができたのならば、弊社を卒業してもいいと考えています。生涯一企業の時代はとうに過ぎました。問題意識はありません。

谷本:社内のダブル業務における課題はありますか。

吉野:課題というよりは気を付けている点ではありますが、社内の本部長たちにもジョブローテーションなどで各分野の垣根を超えるよう働きかけています。上がやらないと下にもその意志が伝わりませんし、ダブル業務を受け入れる側、送り出す側、双方の業務を知らないとこの制度は成り立たないと考えています。

谷本:制度を設けて社内でプラスになっていることはありますか。またこの先に向けてはどのようにお考えでしょうか。

吉野:2つの制度は始まったばかりで、試行錯誤の段階であり、具体的にこの先のどのように考えているかはまだ話せません。しかし、副業や社内ダブルジョブをする人間は活き活きしているように見えます。これからも、笑顔でチャレンジをし続けられるような仕掛けをどんどん取り入れていきたい。その分、健康面、メンタル面、現状など、定期的に話を聞きながら、フォローの体制を整えていきます。

谷本:副業を解禁する企業は今後増えていくのでしょうか。

吉野:私どもは元々新しいコーポレートアイデンティティに重きを置き、その下で副業・ダブル業務推奨を掲げたら後者がメディアに取り上げられてしまいました。当時はまだ世間的に少ないのだと思っていましたが、最近は副業推奨を取り入れる企業数が全体の14%まで膨らんできています。これからのトレンドとしては当然の推移でしょう。

谷本:最後に、吉野さんが考えられる理想の働き方について教えてください。

吉野:近年、環境の変化に伴い、企業も変わってきています。副業は、自分の勤めている会社や業界外でどのようなことが起こっているか、環境の変化を実際に体感することにつながります。自分なりに得た知識を企業に還元できるということは、新しいビジネスや制度改革の可能性につながります。それは社内のダブルジョブで、異なる部門の垣根を越えることからも得られます。

社外でも社内でも、横のネットワークをつなげていけば、本人の知識や経験を積み上げることができます。またモチベーションを維持するためにも大事なことだと思います。そういった社員が活き活きとするような働き方が理想だと私は考えております。


吉野俊昭◎ロート製薬株式会社の代表取締役社長、COOを兼任。1950年生まれ。甲南大学法学部卒業後、ロート製薬に入社。03年5月執行役員ヘルスケア第一営業部長、04年6月取締役就任。同年7月取締役ヘルスケア事業本部長、05年5月同マーケティング本部長、08年5月同東京支社長、同年6月常務取締役就任。

構成=小林有希 インタビュアー=谷本有香

 

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