右:ピーター・ファンコーニ、左:オマール・カンディール(写真=セドリック・ディラドリアン)

3000万口の融資実績を持つマイクロファイナンス専門の投資機関が、新ファンドの融資対象として「女性起業家」を選んだ。そのビジネス的根拠とはー。


2016年10月、日本の投資機関に全く新しい視点をもたらすファンドが日本に誕生した。

日ASEAN女性起業支援基金と名付けられた同ファンドは、マイクロファイナンスを通じたASEANの女性のスモールビジネス支援を目指す。国内の機関投資家の参画を前提とし、マイクロファイナンスを戦略的な投資手段として位置づけた、政府と民間セクターが出資する投資プロジェクトである。

その仕掛け役は、スイスの投資機関会社、ブルーオーチャードだ。マイクロファイナンス専門の投資機関として01年に設立されてから15年、商業銀行からの借り入れが困難な貧困層への融資を行ってきた。基金発足後も、ファンドマネジャーとして中心的な役割を果たしている。

マイクロファイナンスは慈善事業として捉えられがちだが、ブルーオーチャード会長・ピーター・ファンコーニはそのスタンスに否定的だ。

「我々の活動は慈善事業ではなく、ビジネスを目的とし、リターンを見据えた純粋な投資です」と断言する。

ビジネスであると明言するだけあって、彼らが今回ASEANの起業家の中でも女性を対象に選んだのにも、合理的で明確な理由がある。融資リスクの低さだ。

ファンコーニいわく、女性は、男性に比べて中長期の計画に長けているという。そのため女性への融資はデフォルト率も低く、リスクが少ないというのだ。この傾向は、ブルーオーチャードが行ったある調査に裏付けられている。
 
家庭を持つ男女にそれぞれ同額のマイクロファイナンス融資したところ、男性はよりリスクの高い資金の使い方をする傾向があることがわかったのだ。他方、女性はより堅実な使い方をし、融資した際のデフォルト率は「1%よりもかなり低い」という。

日本で前例のない取り組みにもかかわらず、日ASEAN女性起業支援基金は既に1.2億ドルの融資を計画している。国際協力銀行、国際協力機構、住友生命などからの出資も決まった。「高リスク」というイメージが先行し、貧困層への投資が敬遠されてきた日本における突破口として期待される。

「こうして座っている間にも、ブルーオーチャードは7秒に一人のペースで融資をしています」とファンコーニ。同氏の先見性と手腕の下に、マイクロファイナンスの夜明けがようやく日本にも訪れようとしている。


ピーター・ファンコーニ◎ブルーオーチャード・ファイナンス会長。PwCなどを経てHarcourt Investment CEO、ヴェオントベル・プライベート・バンクCEOを経験し、現職。著書に、「Small Money-Big Impact」「Power to the Poor」(共に共著、NZZ Libro Verlag)などがある。

オマール・カンディール◎ブルーオーチャード・ファイナンス取締役副会長。カリフォルニア大学バークレー校で物理学の学士号、南カリフォルニア大学で地質学の修士号を取得。石油会社、サウジアラビア政府勤務を経て現職。中東やアフリカ北部への投資を専門としている。

文=マーティン・フォスター、翻訳・編集=水口万里

 

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