「君が必要だ、と言われる社員になるために必要なこと」フォルシア屋代浩子社長

屋代浩子 フォルシア代表取締役社長

大手旅行会社の8割に情報検索システムを開発・提供するフォルシアの屋代浩子社長。ビジネスに興味を持った少女時代、起業への歩み、経営と子育てを両立する原動力について聞く。

父が商社に勤めていた関係で南アフリカ共和国で生まれ、小学校時代はギリシアのアテネで育ちました。

当時は海外駐在が珍しく、家族で飛行機に乗り込む際に見送りの人たちが万歳三唱してくれて(笑)、行けば行ったで父はアテネ支店を一からつくり上げるために奔走。高揚した日々というのを、子ども心にも感じていました。

また、アテネには日本料理店がなかったので、お客様をわが家でもてなしていたんです。「○○で石油が出た!」などと大の大人が顔を輝かせて話をしているのを傍目で見て「ビジネスってすごくエキサイティングなものなんだな」と感じた経験が、後年の起業のきっかけにもなりました。

ただ、自分が社会人になったころは女性の総合職がなかったんです。それで、身の丈以上のグローバルな仕事をさせてもらえるのではないかと野村證券に入社しました。数年後に金融工学を学ぶためMITに留学し、卒業後は東京のゴールドマン・サックス証券に。外資系金融という場でお金の流れ、社会・経済の仕組みを骨身に沁みるほど学ばせていただくと同時に、両親の強力な援助を受けながら2人の子育ても経験しました。

起業は、2001年。必要な情報にスピーディにたどりつくための検索エンジンを開発して提供する会社を、志をともにする夫とともに設立しました。現在はたくさんの企業様にご利用いただいておりますが、開発までに3年、大手企業からの受注までには5年がかかっています。

その際に痛感したのは、ビジネスには技術力以上に信用が大事だということ。「いいものをつくったから買ってください」というのは通用しない。一方で、5年間諦めずにいられたのは、「使ったら絶対にご満足いただける」という自信があったから。時間と身銭を投じて得た私の営業ノウハウは「一生懸命にやること」ですが、これはすべての仕事に通じるビジネスの根幹だと思います。

おかげさまで現在社員は90名ほど。毎水曜日に1時間行う全体ミーティングでは、役員会の報告や諸々の情報共有に加え、「わが人生」「○○の時間」などのテーマで15分ほど社員に話してもらう時間を設けています。どれくらい魅力的に大勢の前でプレゼンできるのか、どのような趣味嗜好や興味があるのかがわかり、社員を適材適所に配置するのに非常に有効です。
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構成 = 堀 香織 、写真 = yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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