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2017.03.05

最後に勝つのは「誠実な」企業、スタートアップが知るべき消費者心理とは

ArtFamily / Shutterstock, Inc.


・ 勝敗をかけた選択を分析

次にチームは、サービス提供者の能力に差があることをあらかじめ知らせておくことが消費者の判断にどのように影響するかを調べた。

この調査では、120人に「クイズ$ミリオネア」を模したオンラインゲームに参加してもらい、正答数に応じて少額の賞金を提供した。

参加者には回答を助けてくれる2つの「ライフライン」を用意。一方には「有能だが道徳心が低い人(クイズは非常に得意で、このゲームの正答率は86%)」が待機し、もう一方には「道徳心が高いが、能力は他方より低い人(クイズは割と得意で、このゲームの正答率は55%)」が待機する。

調査チームはクイズを開始した後に、ライフラインの2人のうち正答率が低い方の人は、「貧しい家庭に育ち、多くの困難を乗り越えて大学を卒業した。学ぶことに熱意を持つ人と評価されている」と参加者らに説明した。

その説明を受ける前には、参加者たちは「能力が高い」とされたライフラインを好んで選んでいた(必要とした回数のうち64%で選択)。だが、説明を聞くとその後は、必要な場合の73%において、「苦労を乗り越えた」人を選ぶようになった。

調査から企業が学べること

この調査結果が示すものとして考えられるのは、例えば「道徳的」だと見なされているブランドが、過去に「弱者」といえる状況に置かれていたことを訴えれば、それが有効に働く可能性があるということだ。道徳的な企業は、「正直」「社会意識が高い」「オーガニック」「環境重視」といった言葉と関連付けることができる。

ハミルトン教授らは苦労して成功した道徳心ある企業の例として、現在はコカ・コーラの傘下にあるオネストティー(Honest Tea)を挙げている。同社のウェブサイトには、創業者が自宅のキッチンで紅茶を入れていた起業当時の苦労話が紹介されている。その他には、アイスクリームの「ベン&ジェリーズ」、自然化粧品の「バーツビー」などがある。

こうした「判官びいき」現象について同教授はさらに、消費者は多くの場合、ブランドを選ぶにあたって「不利な状況を乗り越えてきた、リソースは少ないものの熱意あるサービス提供者に引かれる」と説明する。

「能力で競合他社に勝てないと考える企業にとって、突破口となるのは過去の苦労話をアピールすることかもしれない」という。

ただし、この方法には一つ注意すべき点がある。そのアピールの効果が得られるのは、「極めて倫理的」(道徳的)との評価を得ている場合に限られるということだ。

編集=森 美歩

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