1千億円を使い果たしたウェアラブル「Jawbone」 医療向けシフトか 

Credit: Jawbone


Fitbitも大苦戦しリストラ決行

Jawboneは、医療分野にも既に進出している。同社は、2013年にウェアラブルセンサーのメーカーであるBody Mediaを1億ドルで買収し、大手保険会社のシグマと共同で糖尿病リスクの高い顧客をモニタリングする実験を行っている。また、2015年にはカリフォルニア州ポートラ・バレーに本拠を置くSpectrosという診断機器メーカーを買収している。同社は、医師が生命に関わる疾患を遠方から診断するための分子センサーや画像装置などを開発している。Spectrosの創業者で医学博士でもあるDavid Benaronは、Jawboneの取締役兼チーフ・メディカル・オフィサーに就任した。

Jawbone以外にも、利益率が低く不安定なコンシューマー向け事業を撤退してエンタープライズ向けに移行する企業は多い。ブラックベリーやノキア、IBMなどが良い例だが、成功の度合いはまちまちだ。Jawboneにとってハードルは決して低くないが、フィットネストラッカー市場の成長が鈍化する中、同社には選択の余地がないのが実情だ。Kantar Worldpanel ComTechによると、2016年12月時点でスマートウォッチかフィットネスバンドを所有するアメリカ人の割合は15.6%と、前年の14.8%から微増に止まったという。

業界最大手のFitbitも業績悪化に苦しんでいる。先月には、グローバルで従業員を6%削減することを公表し、株価はIPO価格の20ドルから70%も下落している。フォーブスの寄稿者であるピーター・コーハンも「株価が下がっても、Fitbit株を買うべきではない」と忠告する。同社は昨年、同業のPebbleを買収したが、かつて人気を誇ったPebbleも苦戦を強いられている。

Fitbitは、今後業績がさらに悪化するようであれば、Jawbone同様に医療分野に移行するかもしれない。イギリスの調査会社Juniper Researchによると、フィットネストラッカーは少しずつヘルスケア分野に進出しているという。

「Fitbit、Withings、Misfitなどのウェアラブルメーカーが医療分野への進出を牽引している。彼らはウェアラブルと医療データベースを統合させ、ユーザーにはフィットネスよりも健康を訴求している」とJuniper Researchのレポートは述べている。 これらの企業にとって朗報なのは、今後アメリカ人の5人に1人がアクティビティトラッカーを使用し、「健康ウェアラブル端末」市場が200億ドル規模になると予想されていることだ。しかし、様々な難題に直面するJawboneがこの巨大市場で存在感を発揮できるかは不明だ。

編集=上田裕資

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