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2017.02.18

今こそ「バイ・アメリカン」運動復活を、米自動車労組トップが訴え

デニス・ウィリアムズ委員長 (photo by Bill Pugliano / gettyimages)

貿易保護主義で大衆主義の大統領就任を受け、全米自動車労働組合(UAW)は今こそ「バイ・アメリカン」運動を再活性化させるべきだと考えている。

米国で再び(自動車の)不買運動が始まるかもしれないと語るUAWのデニス・ウィリアムズ委員長は、雇用を外国にアウトソースしている米企業を攻撃するドナルド・トランプ大統領の姿勢を評価している。

「この問題に対応している最初の大統領だ。トランプには賛辞を贈りたい」

さらに、こうした状況をフルに活用しようと、UAWは消費者に外国製の自動車の不買を訴えるための新たな広告キャンペーンを計画中だという。委員長は報道陣に対し、「国産の自動車でないなら、購入するな」と発言している。

「国産車」の定義は?

だが、その実行は口で言うほど簡単ではない。米自動車メーカーの大半は、採算面を理由に国内での小型車生産は難しいと結論付けている。国内での生産が高額なトラック、SUVに集中しているのはそのためだ。価格の高い車を購入できない消費者の中には、安価な輸入車しか選択肢がないという人もいるかもしれない。

さらに、自動車業界が完全にグローバル化されている中で、「国産車とは何なのか」という問題もある。米自動車売買サイトのカーズドットコム(cars.com)が公表している2016年版の国産車リスト「American-Made Index(アメリカンメイド・インデックス)」によれば、2011年には30モデルあった「国産車」は、2016年には8モデルにまで減少している。

このリストで「国産」と定義されるのは、「使用している部品の多くが米国またはカナダ産」であり、「米国内で組み立てられ」、「大半が米国内で販売されている」モデルだ。そして、この定義に基づいて考えた場合、最も「国産度」が高いのはどのモデルだと思うだろうか──UAWには加入していない、ケンタッキー州の工場で生産されているトヨタの「カムリ」だ。

米国とメキシコ、双方の工場で生産されているモデルもある。シボレーの「シルバラード」や「ソニック」、「クルーズ」、GMCの「シエラ」、クライスラーの「ラム 1500」などだ。

つまり、消費者はその車がどこで生産されているのかを自分自身で調べ、明確にしなければならないということだ。ウィリアムズ委員長は、UAWは車両識別番号 (VIN)からこうした情報を読み取る方法について、消費者を教育する必要があると述べている。

また、車の運転席側のドアの内側に貼られているステッカーを見れば生産した工場を特定できるほか、UAWのウェブサイトには、加入する工場が生産しているモデルの一覧が掲載されているという。

消費者にとっての「国産」

ウィリアムズ委員長は、消費者にはUAWに加入する工場で生産されている車を買って欲しい、少なくとも、たとえUAWのメンバーではなくとも米国内の工場で造られている外国メーカーの車を買ってほしいと話す。

だが、残念ながらその訴えは、消費者には伝わらないだろう。ほとんどの人たちは、車がどこで組み立てられているかなど気にしていない。カーズドットコムの調査によれば、「国産車しか買わない」と答えた消費者は、わずか13%だ。一年前の同じ調査では、28%がそう回答していた。そう考える消費者はこの間にも、大幅に減少している。

編集 = 木内涼子

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