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2017.02.16

マンションは「管理状態」で資産格差が出る時代に[日本の不動産最前線 第10回]

kurhan / shutterstock.com

新築マンションを買って入居した後、建物に不具合があるとどうなるか。

「引き渡しから10年間は10年の保証がついています」といった説明を受けて安心してはいけない。なぜならその範囲は「主要構造部」「雨漏りを防止する部分」の2点に限られるからだ。それ以外の多くの部位は2年・5年などの期限を設けた「アクターサービス」の範囲で行われる。

10年の保証は「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づく売主事業者の義務である一方、アフターサービスは法に基づくものではなく、各事業者の任意で行われるため、その基準も具体的な対応も、それぞれ微妙に異なる。いずれにしても、アフターサービスの期間内であれば、建物の不具合は無償で直してもらえる。

具体的な保証内容は、売買契約関連書式の添付されている「アフターサービス規準書」といった書面に記載がある。

この無償補修について、各住戸内のドア建具、キッチンや洗面、ユニットバスなどの設備について所有者が個別に補修の要望を出すことは多いが、外壁や屋根、地下ピット、廊下、階段、エレベーターなどの共用部分については、多くのマンションで無償補修サービスを活用しきれていない。例えば外壁タイルの浮きや剥がれ、廊下・階段の壁や天井のひび割れ、バルコニーや屋上の排水不良などは2〜5年程度であることが多い。

所有者はそれぞれ各住戸については関心が高いものの、共用部分はどうしても意識が疎かになりがちだ。また屋上や地下ピットなど、日常生活では立ち入ることのない部分に不具合があっても、発見が遅れるといったことも多い。

共用部分でひとたび不具合不具合が起これば莫大な補修費がかかることも珍しくないが、アフターサービス期間内であれば無償補修補修を受けられるところ、期間が過ぎれば管理組合負担、つまり所有者の修繕積立金から捻出しなければならない。

一般に、マンションの長期修繕計画には、このようないわゆる「初期不良」の修繕費は見込まれていないため、突発的な修繕費の出費は管理組合の財政を大きく圧迫する。将来に向けて修繕積立金の値上げを計画している管理組合は多いが、支出を減らす工夫をしている管理組合はまだまだ少ない。

小さな劣化は補修も軽微で済むが、時間を経るごとに劣化の深度・範囲が広がり、それだけ補修費もかさむ。早期に小さな劣化の芽を摘んでおくことも、支出を減らす工夫といえよう。さくら事務所がお手伝いしたマンションでは、アフターサービス期間内に数千万、大規模になると億単位かかる補修を無償で修繕してもらった事例が多数ある。

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アフターサービス保証を有効活用するためにはまず、管理組合が共用部分の不具合を把握すべく、保証期間内に共用部分を一通り点検することだ。

これは区分所有者みんなが手分けしてチェックするケースもあるが、外部の専門家に点検してもらうのがいいだろう。専門家にチェックしてもらう場合は、一定のコストはかかるものの、第三者の専門家による報告書を売り主側に提示できることから、具体的な補修交渉もより容易になる。契約の取り決めに基づき、売り主が直すべきものは積極的に補修請求したいところだ。

国は現在、新しい住宅情報データベースの運用をもくろんでおり、早ければ2018年度には全国で順次運用される。この中には、マンションの管理状態も織り込まれる見通しだ。これは、ブラックボックス化していたマンションの管理状態を可視化し、それを評価に反映させようとするもので、マンションの管理状態によって資産格差に大きな差が着くことを意味する。

文=長嶋 修

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