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2017.02.11

性別にかかわらず平等な機会と報酬、スタートトゥデイで進む女性の活躍

アートに囲まれて行われる日常のミーティング風景。壁のガラスの向こうには、アンディ・ウォーホル作「キャンベルスープ」シリーズ全作品が揃う。(photographs by Mao Yamamoto)

ボーナス全員同額、基本給全員同額、1日6時間労働などの施策で生産性とワークライフバランスの向上をはかるスタートトゥデイ。そんな風土が、女性の活躍も後押しする。

「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を企業理念に掲げるスタートトゥデイ本社は、さながら美術館のようだ。ウェイティングスペースにはイサムノグチの応接セット、ミーティングルームには村上隆やジャック・ピアソンをはじめとしたアート作品の数々。そこに、個性豊かなファッションの社員たちが集う。

スタートトゥデイという社名を知らなくても、「ZOZOTOWN」を知らない人はいまい。現在3,608ブランドを扱う、日本最大級のファッション通販サイトである。輸入CD・レコードの通信販売を開始したことから始まった同社は、いまや商品取扱高が年間1,595億円以上の上場企業になった。ちなみに現代アートの収集は、代表取締役前澤友作の10年以上続く趣味だ。

成長を続ける原動力に、正社員の女性比率51.5%、管理職比率26.5%という数字が示す女性活躍の影響を尋ねると、取締役の大石亜紀子は暗にそれを否定した。「性別に応じた役職登用の検討や施策の実施という観点はありません。あくまでも一緒に働く仲間として尊重して、活躍できる環境を整えようしているだけです」。

男性だから昇進が早いわけでも、女性だから時短勤務が優遇されるわけでもない。むしろ、勤続年数や成果にかかわらず「ボーナス全員同額」「基本給全員同額」という制度が象徴するように、フェアをモットーとした会社なのだろう。

2012年には「ろくじろう(1日6時間労働制)」導入を発表して世間を驚かせたが、そのほかにも新しい取り組みを続けている。そのひとつが、管理職ポストを増大したこと。約10名の社員に対し1名の管理職ポストが設定され、社員からの支持の高さや成長への期待が集まる人材を抜擢したという。2016年4月には24歳の社員を含む30名近くの新任管理職が誕生。そのうち約3割が女性だ。

「管理職に求める能力はもちろんありますが、必ずしも初めから兼ね備える必要はないと思います。会社としてはその人のポテンシャルへの先行投資だと考えている。組織が拡大するなか、社員一人ひとりの活躍にきちんと目を向けることが課題になりつつあるタイミングで、いい取り組みだなと。同期の社員同士で昇進スピードを競うようなことを無駄と考えるカルチャーが、現場にも自然に浸透しています」

創業時から社員数は700倍近くに増え、家庭を持つ人も多い。枠にとらわれない施策や競争をしないという自由で独特のカルチャーが、それぞれの人の能力を伸ばしているということだろうか。

「スタートトゥデイは好きなことを好きな仲間と一緒にやってきた会社なんです。だから会社も無駄なルールをなるべくつくらない。会社側からすれば管理するほうが楽だと思うのですが、社員一人ひとりが自由に好きなことに打ち込むほうが豊かだし、発想が広がります。自由には当然、自己責任が伴うけれど、会社は社員のことを信頼しているし、社員同士で譲り合える風土もある。非常にうまくいっていますね」

助け合いの風土を醸成し、性別にかかわらず平等な機会と報酬が与えられれば、女性は自然と活躍できる。その証明のような企業だ。


スタートトゥデイ◎日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営。2007年に東証マザーズ、12年に東証一部上場。代表取締役である創業者前澤友作氏の地元の千葉県に本社および物流拠点を構える。「ポーター賞」をはじめとする企業表彰も数多く受賞。

※フォーブス ジャパンは昨年12月19日、日本最大規模の女性アワード「JAPAN WOMEN AWARD 2016」を発表。“働きやすさ”ではなく“真の女性活躍”の促進・発信を目指す同アワードで、スタートトゥデイは真に女性が活躍している企業として、企業部門総合ランキングの従業員規模300名以上1,000名未満の部でグランプリを受賞した。

文=伊勢真穂

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