正統マニファクチュールの理念と精神を未来につなぐ/ジャガー・ルクルトCEO

ジャガー・ルクルト ダニエル・リエドCEO

西欧がアール・デコの輝きに満ちた1931年、反転ケースの独創性と機能美を纏うタイムピースの名作が誕生する。その名は「レベルソ」。時を刻む極小の精密機械の銀河で、発明と開発に挑み続けるジャガー・ルクルトの、進取の気性の象徴でもある。「機械式時計に親しんだ子どものころ、社名より先に、『レベルソ』の名が記憶に刻まれていました」
 
「レベルソ・トリビュート」を手に、ダニエル・リエドCEOの「時」は少年時代に遡る。2016年はレベルソ誕生85周年に当たる。

「ジャガー・ルクルトは183年の歴史があり、私が経営に携わったのは、その一部に過ぎません。私に課された責務は、歴史に培われた精神とマニファクチュールとしての正統を、未来に継承すること。そのためには、人材の力が不可欠でした」

スイス・ジュウ渓谷の本社では、開発部門だけで、125名の専門スタッフが研鑽を積み「技術的な想像力が豊かな企業」の駆動力となっている。スイスのグランドメゾンとしては異例の人数だ。

「当社の特徴は、幅広い商品構成。若いエンジニアは、シンプルから複雑系まで段階を踏んで技術を体得し、成長とともに伝統は継承されるのです」

ジャガー・ルクルトのタイムピースを際立てる、ギョーシェ彫り、エングレービング、エナメル装飾、ジェムセッティング。こうした希少なクラフトマンシップ(Metiers Rares)は、社内アトリエの熟練マイスターが技巧を凝らし、同時に後進を育成してきた。ジャガー・ルクルトの時計は、伝統と未来を宿す時を超える装置でもある。それを手にした者もまた、スイス正統のマニファクチュールの伝統と未来の一部となる。

「その将来の証しに、私たちは半世紀前のアンティークピースを修理する体制を整えました」。さらなる価値追求に、「レベルソ」のパーソナライゼーション受注も始まった。

「銀座並木通りにオープンした『ジャガー・ルクルト 銀座並木ブティック』で、ぜひ、私たちの世界観を体験してほしい。さらに興味を持たれた方は、スイス本社を訪ねてください。私たちはマニファクチュールの現場をお客様に公開しています」

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国内初となるフラッグシップブティックは2016年11月、銀座並木通りにグランドオープンした。100平方メートルの広さを誇るブティックでは、マニファクチュールのアイデンティティーともいえるアール・デコ装飾をデザインコードとした、ジャガー・ルクルトならではの世界観を体験できる。また、熟練の時計師が常駐し、修理やメンテナンスをはじめとするサービスも提供してくれる。

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誕生85周年を機にコレクションをリニューアルした、メゾンのアイコン「レベルソ」の新作モデル。反転ケースの両面のダイアルが作動するダブルフェイス構造を採用し、表面にはスモールセコンド、裏面には24時間表示のデイ/ナイト表示を備えている。1,485,000円(税込)

ダニエル・リエド◎1960年生まれ、スイス・ジュネーブ出身。大学で精密機械工学や金融を学び、ロレックスに入社。ロレックスおよびチュードルでキャリアを重ねる。その後、ジャガー・ルクルトに移籍しインダストリアル・ディレクターに就任。2013年より現職。

text by Kazuo Hashiba, edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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