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2017.01.31

ケニアに「希望の種」を植えた肥料プラントの可能性

ケニア初の肥料プラント建設のためのグランド・ブレイキング・セレモニー。ショベルカーを使った豪快な“鍬入れ式”だ。

2015年9月4日、ケニアのルト副大統領が乗った大型のショベルカーがケニア西部のエルドレットの大地を1度、2度と掘り起こした。それを見守る数十人の関係者の間から大きな拍手が湧き起こる。ケニア式の“鍬入れ式”だった。この地に建設されるのはケニア初の肥料プラント。工場が稼動すれば、ここで年間15万トンの配合肥料が生産される予定だ。その鍬入れ式に副大統領が参加したこと自体が、これまで年間60万トン使用されている肥料全量を輸入に頼るしかなかったケニアの、この工場への期待の大きさを示している。

同プラントを建設するのはToyota Tsusho Fertilizer Africa(TTFA)。豊田通商の100%子会社で16年8月に工場を稼動させ、ケニアの主要農産物であるトウモロコシや小麦などの栽培に使う配合肥料「Baraka」の生産を開始している。

同社CEOの和田明はケニアの労働人口の75%を占める農業従事者の悩みを代弁した。

「肥料の供給を長く輸入化学肥料に頼ってきたケニアではいま、農地が痩せ、生産量が落ちてしまっていることが多くの農民の悩みでした。30年前には1ヘクタール当たり7~8トンの収穫が見込めたトウモロコシの収穫高が、最近では半分以下の3トン近くにまで減ってしまっているのです。このままでは、ケニアで多数を占める農民が食べていけなくなってしまう」

もともと酸性度が高いケニアの土壌が、化学肥料の使用を繰り返すことでバランスを崩していたのだ。

「このままケニアの大地を痩せさせてはいけない」――。

ケニア政府の危機感は大きかった。政府は国内に配合肥料工場をつくるために力を貸してくれと、多くの協力企業に打診をしていた。

そこで立ち上がったのが豊田通商だった。2014年、ケニア政府とMOU契約を結び、ケニア初の肥料プラント建設事業はスタートした。

豊田通商は1922年からアフリカで事業を開始。90年以上にわたる歴史と、アフリカ54カ国中53カ国でビジネスを展開するネットワークで培った実績とプレゼンスがある。2012年にアフリカでフランス最大の商社CFAOに資本参画したことで、さらにそれは強化された。それらの経験は今回の肥料プラント事業でも真価を発揮した。アフリカでは工期遅れは当たり前のように発生するが、日本人スタッフを張り付けることで現地作業員のスケジュール管理を徹底させ、工場は予定通り1年で竣工に至った。

TTFAではプラント稼動に先立って国際肥料開発センター(IFDC)や地元のモイ大学農学部と共同で約200カ所の農場で実証実験を実施し、農作物ごと、またそれぞれの土壌の状況・質に即した多品目の配合肥料の開発を進めてきた。

「土壌に合った配合肥料を使用した実証実験の結果、トウモロコシの収穫高を昔と同じ7~8トンレベルまで回復できることがわかったのです」(和田CEO)

さらに土壌検査を実施し、最適肥料や肥料を与える量、タイミングや方法を農民にアドバイスする地方政府農業指導員数十人の再教育を行い、農学部出身のインターン生も採用した。彼らは皆、ケニアの農業の課題を解決するという目的意識が高く、積極的に知識を吸収しているという。

同社の活動を視察したIFDC理事長も「これはサブサハラにおけるモデルプラントになる」と大いに喜んだというほど、持続性の高いビジネスモデルがスタートしたのである。

工場が稼動してからも従業員たちのモチベーションは高かった。

「工場の機械は南アフリカ製のものです。しかし、ケニアと南アでは気候も生産物も違い、異なった原料も使用する事で、当初は機械が止まってしまうことが度々ありました。そのたびに工場スタッフが工夫をして設備を修正したり、コンピューター制御を調整しながら対応してくれました。あるとき、私が工場に戻り、昨日までは無かった新しい工夫を見つけた時は非常に嬉しかったですね。“カイゼン”の精神がいつの間にか従業員の間に根付いていたのですから」(和田CEO)

冒頭で紹介した“鍬入れ式”は、当初は日本式で行う予定だったという。鍬入れの儀式は副大統領と日本大使が行う手はずだった。ところが、「副大統領が鍬だって? そんなことはさせられない! ショベルカーでガバッとやればいいじゃないか」ということで、急遽、ショベルカーを手配して行った“日本・ケニア合作”の鍬入れ式だった。こうした連帯感が“カイゼン”につながったのかもしれない。

「農業を安定させることは、アフリカ諸国にとって食料確保以上のメリットがあるのです」と、和田は言う。「アフリカでは農業人口が就労人口の多くを占めています。彼らが農業で生活できるようになれば、都市に出て職を探す働く必要がなくなります。これによって多くの途上国が悩んでいる都市のスラム化を防止することにもつながります」

ケニアの肥料プラント事業はビジネスとしての可能性も大きい。現在、肥料の年間使用量は60万トンだが、中期的にはこれが約3倍近い150万トンに増えることが見込まれている。将来的には近隣諸国への販売に横展開することも可能だ。

ケニアで植えられた“希望の種”は、近い将来アフリカ全土で花を咲かせそうだ。



和田明(わだ・あきら)
◎Toyota Tsusho Fertilizer Africa(TTFA)CEO
88年入社以来、木材、化学品、コーポレートの各業務を担当。長く米国駐在経験を持つ。15年からケニアに駐在しアフリカ肥料事業の立上げに従事。

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