この世界からお金のストレスを消す! 「マネーフォワード」辻 庸介

マネーフォワードの辻庸介(写真=ヤン・ブース)


トリプルグッドは「三方よし」を英語にした社名の通りの理念をもった会社で、辻とは中小企業を良くしたいという思いで一致。顧問先のほぼ全ての企業にクラウド会計を導入した。中小企業の生産性を上げ、働く人の給料を上げるようなサービスを作りたい。辻はそう思って創業したが、中小企業にもっとも近い会計事務所や銀行との協力が必要だと気づかされたのだ。

辻が地方の会計事務所を訪ね歩くようになると、行く先々で似た経験をした。税理士がこう言うのだ。「イノベーションを起こさないとダメだ」「クラウド会計を使って、どうやってビジネスモデルを再構築するか」。口々に変革への熱意を語り、会計処理を楽にして、出てきた数字から何を改善すればいいのかを見て、「中小企業に新しい価値を」と言う。

税理士自身が、もともと起業家であり、中小企業支援という志を捨てなかったからこそ、会計事務所を大きく成長させている。だから地域でトップクラスの会計事務所に赴くと、志を共有できたと辻は言う。

「地銀さんでも同じです。頭取を紹介されて話をするうちに、未来を見ている方々が多く、僕の方が勉強になります。銀行さんの課題を僕たちは理解しているようで、実はしていなかった。コミュニケーションすることで、本当にITで解決すべき点が見えてきたのです」
 
会計事務所や金融機関との提携だけでなく、地方自治体、商工会議所に拡大。さらに法人客を多くもつアスクルやヤマト運輸などとも手を組み、新規サービスの共同開発や請求業務のクラウドサポートなど、サービスの領域を広げている。

「こんな非効率的な仕事があるのかと思ったのが原点です」と辻は苦笑する。01年、京都大学農学部を経てソニーに入社。配属されたのは、想定外の経理部だった。日々、数字と煩雑な作業に翻弄されると同時に、どこが自動化できて、どういう仕組みなら便利になるかを考えた。

そして辻らしいのが、自分と同じように七転八倒する人が世に大勢いると想像したことだ。かつて大阪の祖父が会社を経営していたことも影響しているだろう。この世から煩雑さをなくすため、辻は全国の点と点を繋げて歩く。

「共通の志やパッションがあってのクラウドだと思うんですよ。そういう人たちと繋がってエコシステムをつくれば、ユーザーにとって本当の価値を提供できる世界観ができると思うんです」

マネーフォワード 辻氏は7位にランクイン! 【日本の起業家ランキング2017】一覧はこちら!

文=藤吉雅春 スタイリング=石関淑史 ヘアメイク=桜井 浩

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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