マネーフォワードの辻庸介(写真=ヤン・ブース)

個人向け家計簿アプリの利用者は400万人を超え、事業会社や地銀との連携も進む。フィンテックの雄、辻庸介の理想とは。

マネーフォワードはフィンテックの旗手として知られるが、フィンテックという一言ではこの会社の本質を語りきれないだろう。辻庸介と話していると、こんな話になったからだ。

「子供を産まない」「結婚をしない」というアンケートで必ず多数を占める理由が、「お金がかかるから」である。

「お金の不安で人生の選択の幅を狭められるのはもったいない。お金に関する課題を我々のテクノロジーで解決するのが創業理念です」と言った後、こう続けた。

「将来のお金のことを考えなくていいのが一番いいじゃないですか。『勝手にやっといてください』みたいな。子供は何人欲しいとか、将来は何をやりたいとか、それにはいくら必要で、収入に合わせて毎月預金をどのくらいして、運用で何%回してといったことは、結構、計算でわかります。私たちは家計の収支を自動化した家計簿アプリでスタートして、今後はこの道筋をどう進化させていくかです」
 
そう言って、「いやあ、やらなきゃいけないことはいっぱいあって」と頭をかく。
 
つまり、辻はこの世からお金に関する人々のストレスを片づけようとしているのだ。個人に限らず、企業もだ。人間誰しも未来に不安なく、計画通りに生きられたらと思う。しかし、計画的に生きるには、工面しなければならないことが多い。しかも、工面することに忙殺されると、何のために身を粉にしているのかわからなくなる。
 
2012年に創業し、自動家計簿アプリの利用者数を400万にまで増やした辻は、16年に住信SBIネット銀行の提供するAPIと公式連携を開始した。日本の銀行では初のAPI連携である。APIはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、異なるサービスの連携を簡単にする。

「食べログ」のウェブサイトにグーグルマップの機能が載っているのは、グーグルマップ側が誰でも地図情報を使えるようにAPIとして提供しているためだ。同じく、金融機関のデータも他のサービスと繋がることで、「ユーザーの世界観が変わる」と辻は言う。
 
だが、最初から彼は銀行との提携を視野に入れていたわけではなかったという。

マネーフォワードは全国5都市に支社をもち、200人を超える社員がいながら、社長自ら毎週のように地方に営業に回る。

「実はかなり面白いんです」と、辻は言う。

きっかけは14年の春だった。大阪からトリプルグッドという税理士法人の代表が東京まで訪ねてきた。大阪のフィンテックに関するセミナーで講師の辻の話を聞き、もっと話を聞きたいという。

文=藤吉雅春 スタイリング=石関淑史 ヘアメイク=桜井 浩

 

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