宅急便は単なる運送業にあらず! ヤマトホールディングス 山内社長

ヤマトホールディングス 代表取締役社長 山内雅喜(写真=佐藤裕信)

「クロネコヤマトの宅急便」が誕生して、今年で40周年。今秋発表された日経リサーチによる2016年版企業ブランド調査で、ヤマトHD傘下のヤマト運輸は初の首位を獲得した。

過去の首位は日本マイクロソフト、グーグル、ソニー、アップルジャパンなどいずれも家電・IT系の企業で、サービス系の企業では初の快挙となる。ヤマトHDは「物流」を、単なるモノの流れではなく、我々のライフスタイルやビジネスになくてはならない「社会的インフラ」へと変革した、と評価されたのだ。

しかし、ヤマトHD社長の山内雅喜は喜びの反面、「経営者としては身を引き締めなければいけない事態だ」と分析する。

「もちろん、現場でお客様と接している社員一人ひとりが積み重ねてきた"信頼"に対してご評価いただいたので、非常に誇りに思います。一方、この評価には将来に対する期待値も含まれているので、期待に応えられなかったときの反動は大きい。社員一人ひとりが今後いっそう意識して動かないと怖いなという思いがあるのです」

実際、山内は長年築き上げてきた信頼を一気に失いかねない危機を経験している。ヤマト運輸の社長だった2013年10月25日、「クール宅急便の温度管理がずさんだ」という記事が全国紙に掲載された。

すぐに全国約4,000ある営業所の緊急聴き取り調査を実施すると、保存用コンテナの扉を開けたまま仕分けする際のルールを徹底できていない拠点が約200カ所あると判明。3週間かけてさらなる調査を行い、11月28日に調査結果と今後の具体的な再発防止策を発表している。メディアを恨みましたかと問うと、山内はこう答えた。

「これはルールを守らない社員が悪いのではなく、守れないような状況になっていることを把握せずにサービスを提供していた会社の経営責任です。今後企業として何をすべきか、世の中と社員に対して対策を表明することが肝心でした」

設備投資をし、無制限に受けていたクール宅急便の総量をコントロールできるシステムも構築。同時に、山内は役員と手分けして、約2カ月をかけ全国の拠点を行脚、社員に頭を下げ、価値観を再度共有した。

「ビデオメッセージのような一方通行では、内容は伝わるけれども想いは伝わらない。やはり役員が行って、直接話すことが大切なんです」
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文=堀 香織

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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