いじめられっ子から起業家へ、好転のきっかけは「認められたこと」

マザーハウス代表兼チーフデザイナー 山口絵理子(左)とフォーブス ジャパン 副編集長 谷本有香。


谷本:日本人はケンカを避けてしまうというか、ケンカの仕方がわからない部分がありますよね。お互いの理解を深め合う建設的なケンカをするためのコツはありますか?

山口:ケンカの方法は人それぞれあると思うのですが、本音で言い合うことが重要ですね。相手を批判する目的ではなくて、根底には自分の強い思いがあって、それを理解してもらいたい、あるいは、自分の信念と相手の信念がぶつかってしまっているところを、どうしてぶつかってしまうのか理解するために本音を言う。

谷本:学生の間でも山口さんがされているようなソーシャルビジネスに憧れる人は多いですし、山口さんのような女性になりたいと思う人もたくさんいます。どのようなことを伝えたいですか。

山口:途上国に行くこと自体がゴールじゃない、ということです。途上国の人々と一緒に商品をつくり、その価値に対して、購入するお客様がどれだけ満足できるか、を一番に考えるべきです。

それから、自分がやりたいものを見つけて、極めていきたいと思う技を持つことです。私の場合は、バングラデシュに行ってみて、自分にはデザイナーとしてのスキルがあるのにやりたいビジネスが何もできない、という悔しさがあったんです。デザイナーは絵を描いているだけではだめだと気付き、そこから、デザインに生かすために素材のことや職人のことを学ぶようになった。

カバンをつくる、ということを極めたんです。最近始めたジュエリーも同じですが、野望だけでは何もできない。極めようと思うことが大切です。とにかく一つのものを続けて見ることが大事です。

私は絵が好きで、得意でもあったので、デザイナーになるためには恵まれている状況でした。技を極めるには“好き”と思う気持ちと、“得意”あることの両方が揃っているのがベストです。でも、好きでも得意でないことや、あるいはうまくできるのに自分はそこまで好きでないこともありますよね。そういう組み合わせは、誰しもが何通りも持っているものであるから、いろいろやってみて、好きと得意のパズルのピースが合うまで続けてみることが大切です。

谷本:もし山口さんが一生を終えた時、人からどのように表現されるような生き方をしていきたいですか。

山口:死ぬ間際まで現場を見守り続けて、最後は工場で死にたいと思っているんです。人からは「最後までものづくりして、職人の価値をつかって人々の心を動かすということを求めていった」と言われたいですね。


山口絵理子◎マザーハウス代表兼チーフデザイナー。慶應義塾大学卒業。バングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程入学。現地で2年間、日本大手商社のダッカ事務所にて研修生を勤めながら夜間の大学院に通う。2年後帰国し株式会社マザーハウスを設立。

構成=吉田彩乃 インタビュアー=谷本有香 写真=藤井さおり

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