最新のポルシェが生まれる最新鋭のファクトリー

ポルシェの2つ目の工場として、2002年に旧東ドイツ領ライプツィヒにオープンした。完成車の組み立て工場として開設されたが、今では、ボディ、塗装、テストコースまでが併設される総合的なファクトリーへと変貌した。

ライプツィヒという地名を聞いて、たいていの人はゲーテの代表作である『ファウスト』を思い出すだろう。若き日の文豪が足繁く通っていた酒場、アウアーバッハス・ケラーは、小説の中だけではなく、旧市街に今でも実在する。

古き良き中世の趣を残す町並みではあるが、旧東ドイツに属するエリアならではの高い失業率につい最近まで喘いでいた。しかし、21世紀に入って間もなくポルシェの工場が進出したことを皮切りに、自動車や部品の工場の進出が続々と続き、失業率は大幅に改善した。

ポルシェの工場では、2002年頃SUVの「カイエン」の生産が始まり、ポルシェの急成長にともなって、1270台という限られた数だけ生産された「カレラGT」、4ドア・クーペの「パナメーラ」、ミドルサイズSUVの「マカン」と、生産台数を増してきた。

ファクトリー内の施設にしても、元々は、各地から取り寄せた部品を組み立てるアッセンブリーラインのみだったが、ボディショップ、ペイントショップ、そしてテストコースまで備えた全方位型のファクトリーへと成長してきた。

そして今回、新型「パナメーラ」の生産をスタートするにあたって、最大のセリングポイントは“インダストリー4.0”の導入だ。耳慣れない言葉だが、わかりやすくいえば、「第4次産業革命」を起こす取り組みであり、スマート・ファクトリー(=考える工場)のコンセプトに基づいている。

工場を中心に据えて、旧来の生産方式であるラインを工程ごとに分けて、その中でダイナミックに入れ替えができる。さらに、リアルタイムに連携して、少量多品種、付加価値の高い製品を大規模に生産することが目的だ。

ポルシェの最新鋭のファクトリーに足を踏み入れると、予算を割いて、最新設備を整えた工場を造るとはこういうことなのか、と感心する。すべてを挙げていたら紙幅が足りなくなりそうだ。

すべてのモデルにコードがタグ付けされており、それによって、生産ラインの各工程にオーダーを出し、完了のフィードバックをするシステムをクラウドおよびセンター・ベースで導入している。ボディショップでは、“ポルシェ品質”を保つべく、30〜40分もの時間をかけて、オールアルミ製ボディに人の手で磨きをかけている。

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PANAMERA:アルミ製ボディパネルの表面を1台あたり30~40分かけて修正する。鉄と比べて、アルミはプレス後の表面が荒れやすいからだ。1台のクルマができるまでに要する時間は36時間と、通常の1.4倍程度となる。

さらに、クオリティ・センターを新設し、生産に先駆けたプリプロダクションの段階から高品質を実現している。

新型「パナメーラ」は1,094万円スタートだが、イノベーションを取り入れる一方で、人の手による丁寧な品質管理が行われていることを目の当たりにすると、バリューな選択と言っていいだろう。

【特集】ポルシェが現代の起業家へエールを送る「PORCHE meets STARTUP」

text=Yumi Kawabata

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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