トランプ政権に脅える米「大麻業界」 新司法長官は合法化反対

ジェフ・セッションズ (photo by Jeff Swensen / gettyimages)

トランプ次期米大統領が、強硬な大麻反対論者であるアラバマ州のジェフ・セッションズ上院議員を司法長官に指名したことで、米国の大麻ビジネス界に不安が広がっている。トランプ自身はこれまで医療大麻の解禁、そして大麻の合法化を各州が決定することについて肯定的な姿勢を見せてきた。

しかし、セッションズ上院議員が大麻関連の法規制を強化すれば、現在大麻ビジネスを運営している者は罪に問われる恐れがある。大麻に対する現政権と次期政権のポリシーは正反対だ。

オバマ大統領は、大麻をアルコールと同様に扱うべきだと発言。対するセッションズは、今年4月に行われた上院のドラッグに関する公聴会で「(オバマの)最大の失敗の一つが手ぬるい大麻政策であることは明らかだ」と批判した。

もっとも経済最優先のトランプにとって、ホフストラ大学ロースクールで大麻関連の法や事業を教えるマーク・ロス教授が「急成長中の数十億ドル産業」と呼ぶ合法大麻ビジネスは否定しがたいはずだ。業界関係者たちは、大麻ビジネスが生み出す雇用や税収の増加にトランプが目を向けることを願っている。

調査会社GreenWave Advisorsのマット・カーンズは、この11月に住民投票で娯楽用大麻の合法化が可決されたカリフォルニア州では、解禁1年目となる2018年の税収が7億7,700万ドル(895億円)増えると推測する。ただし、セッションズ上院議員が法案の施行を止めようとする可能性がないわけではない。

合法化の流れに逆行することのデメリットは、税収の損失だけではない。大麻成分入りのドロップや薬品を製造するワシントン州シアトルの企業Db3 Corporationでマーケティングを担当するパトリック・デヴリンは、大麻が再び非合法化された場合、「闇マーケットが活性化する」と言う。各州は大麻産業を効果的に制御できており、今後もその体制が維持されるべきというのがデヴリンの考えだ。

闇市場が活性化する恐れも

また、コロラド州デンバーを拠点に米国とプエルトリコの大麻ビジネスのコンサルティングを行うMedicine Man Technologiesのブレット・ローパーCOOは、大麻業界が抱える最大のリスクは、連邦政府の大麻ポリシーの不確かさだと話す。たとえば大麻関連企業は大手銀行の口座開設やクレジット決済ができないため、現金取引が中心となり、セキュリティの問題が生じる。

さらに連邦税法でいかなる事業支出も控除を受けられないことも、企業らを不利な立場に置いている。

大麻産業は、数多くの小規模企業で構成されており、それぞれの企業は大きな財力や発言力を持っていない。ネバダ州で大麻生産者のコンサルティングや流通サービスを提供するmCogのポール・ローゼンバーグCEOは、大手製薬会社がロビー活動を通じ、FDA(食品医薬品局)やDEA(麻薬取締局)に対して大麻ビジネスに不利な措置を取るよう働きかけることを危惧する。

医療大麻ビジネスに携わる人々は、感情ではなく科学にもとづいた判断で政策が作られることを望んでいる。医療大麻製品を製造販売するColumbia Careのニコラス・ヴィタCEOは、「今後作られるガイドラインや手続きが、長期的視野のもと、政権とは無関係な独立した機関によって科学的に実証されたものであってほしい」と語る。

でもそれは希望的観測にすぎない。セッションズ上院議員は4月、「善人は大麻など吸わない」と発言していた。

編集=海田恭子

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