マイクロソフトが狙う「クラウドの支配者」というポジション

サティア・ナデラCEO (photo by Mint / gettyimages)

マイクロソフトのモバイル戦略に関しては、「Windows 10 Mobile」搭載スマートフォンの開発に注目が集まりがちだ。しかし、筆者はクラウド事業にこそ大きなチャンスがあると考えている。

先日のマイクロソフトの株主総会で、同社のサティア・ナデラCEOはWindows 10 Mobile搭載端末について質問をされ、次のように答えた。「今後はセキュリティやContinuumなど、競合製品と圧倒的な差別化が図れる機能を強化していく」

Continuumとは、スマートフォンを外部モニター、マウス、キーボードとつないで、PC のように操作できるようにする機能だ。しかし、もしマイクロソフトがハードウェア開発を戦略の核に据えているとしたら、それは過去の失敗を繰り返すことを意味する。

おそらくナデラもそのことに気が付いていて、今後はクラウドサービスを巡る新たな競争で覇権を握ることを目指すはずだ。その理由は、あらゆる端末がシームレスにつながる環境がますます普及する中で、優れたクラウドサービスの提供が重要なカギを握るからだ。

マイクロソフトがPC用OSで圧倒的なシェアを獲得したように、モバイルOSではグーグルのAndroidが独占状態にある。マイクロソフトが目指すのはAndroidに取って代わることではなく、Androidユーザー向けにクラウドサービスを提供することだ。

クラウドは端末やOSの垣根を超える

クラウドビジネスの強みはユーザーがデバイスを変えても、従来と同じクラウドサービスを使い続ける傾向があることだ。例えば、iPhoneユーザーであってもGmailやグーグルマップ、グーグルカレンダー、グーグルプレイミュージックを利用する人が多い。逆もまた然りで、Android端末のユーザーが、iCloudやアップルミュージックを利用するケースは多い。

ナデラは、マイクロソフトのクラウドサービスが端末やOSの垣根を越えて幅広いユーザーに利用されることを目指している。だからこそ、OutlookはWindows 10 MobileだけでなくAndroidとiOSにも対応しており、Office 365も幅広いデバイスで利用することができる。また、デジタルノート「OneNote」も、異なるデバイス間でノートを共有できるように設計されている。

クラウドはマイクロソフトが強みとする分野であり、ユーザーに魅力的なサービスを提供することができる。同社はこれからのデジタル・エコシステムの時代において、長期間に渡って優位性を保つことが可能だ。

マイクロソフトは、2017年に新型スマートフォン「Surface Phone」を発売する予定で、当面は同社のハードウェアとWindows 10 Mobileに関する取組みに注目が集まるだろう。しかし、忘れてならないのは、モバイル市場で真の王者となるのは端末やOSで最大のシェアを獲得した企業ではなく、最強のクラウドサービスを提供してコネクテッドな世界を実現した企業だということだ。

編集=上田裕資

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