インドでは昔から絵画が愛され、写真は芸術として見なされていなかった。しかし6年前、インドの地元紙は芸術としての写真の人気が急激に高まっていると報じた。また、高価な機材をそろえて本格的な写真撮影に取り組む人々も増えている。
数年前に写真教室「But Natural Photography」を立ち上げた写真家のSujata Setiaは「今のインドで写真のワークショップを開けば必ず人気になります」と語る。
一日5万円の写真教室が満員に
インド人のSetiaはイギリス在住だが、母国でも多くの時間を過ごし、屋外撮影のコツを教えるクラスはインドで大人気になっている。ニューデリーでアマチュアを対象に開催する1日レッスンは、およそ440ドル(約5万円)だが満席になることも多い。
「インドではこれまで写真と言えば結婚式でしたが、都市部ではカップルや赤ちゃんの写真を撮りたいと考える人が増えています」とSetiaは言う。
Setiaの専門は子供や赤ちゃんを被写体とした撮影だ。彼女によるとインドでは写真は依然として贅沢なものではあるが、前よりも始めやすくなったという。写真の腕を磨きたい人たちは、FlipkartなどのECサイトから機材を購入している。
ニューデリーでラジオのパーソナリティを務めた経験もあるSetiaは、かつて声で伝えていたストーリーを今では写真で伝えているという。物語を伝える文化が根付いているインドでは写真も浸透しやすいのではないかと彼女は考えている。
インドの人気写真家ダヤニータ・シン(Dayanita Singh)もブログで同じような分析をしている。「写真は言語や識字レベルに関係なく、誰もが使用できる新たな自己表現の手段だ」と述べている。
Setiaによるとインドの写真ビジネスは女性向きの分野だという。インドで有名で国際的にも知られる写真家には、ダヤニータ・シンのほかスーニー・ターラープルワーラー(Sooni Taraporevala)やケタキ・シェス(Ketaki Sheth)など女性が多い。
一晩数千ドル稼ぐ結婚式カメラマンも
しかも、インド人の女性写真家は経験が浅くても「ヨーロッパのどんな写真家よりも稼いでいる」とSetiaは言う。その理由としては、インドの数日間に及ぶ伝統的な結婚式においてカメラマンの需要が高いことがあげられるという。
インドでは写真家は中流階級の人々にとって人気の職業なのだ。インドの英字新聞「The Times of India」も急激に成長する写真産業をテーマにした記事を掲載した。ニューデリーのような都市部で活躍する人気ウェディングカメラマンは一晩で数千ドルを稼ぐ場合もある。
「写真ビジネスはインドで2~3年後にかなり大きくなるはずです。今後、しっかり自分のポジションを築きたいと思っています」とSetiaは話した。