耳をPC化する「音響AR」で注目のサンフランシスコ企業、ドップラー社の野望

新製品のHere One (Credit: Doppler Labs Inc.)

サンフランシスコのスタートアップ企業「ドップラー・ラボ(Doppler Labs)」はヒアラブル(耳に装着するウェアラブル機器)をiPhone並みに普及させることを目指す。

同社の新製品「Here One」は音響AR(拡張現実)を実現した革新的デバイスとして、野球観戦中に実況解説が聞けたり、眠りにつきやすいように周囲の音量を調節できる。現在プレオーダーを受け付けており、価格は299ドルとなっている。

「我々は全ての人の耳の中にコンピュータを入れたいと考えている。耳は、人体の中でテクノロジーを装着するのに最も適した場所だ」とノア・クラフトCEO(29)は話す。

ドップラー・ラボの創業は2013年。クラフトは元々音楽と映画業界で活躍しており、巨匠マーティン・スコセッシ製作のボクシング映画「Bleed for This」ではプロデューサーを務めた。彼はスクエアやピンタレストへの出資で知られる著名投資家のフリッツ・ランマン(35)と意気投合し、高機能で外見もクールなヒアラブル機器の開発を目指して共同でドップラー・ラボを設立。社名は、ドップラー効果に由来する。

彼らはまずシンプルな製品で市場をテストすることにした。最初にリリースした25ドルの「Dubs」は、音質は変えずに音量だけを下げることができる耳栓で、30万個を売る大ヒットとなった。その後、Dopplerは本格的にARデバイスの開発に乗り出し、野外音楽フェスティバル向けにプロトタイプを製造した。

iPhoneのヘッドホンジャック廃止が追い風に

また、資金調達も実施しアセキア・キャピタル、チャーニン・グループ、ワイルドキャット・キャピタル・マネジメントなどのVCや、ライブ・ネイション、WME、ユニバーサル ミュージック グループなどの事業会社から総額5,000万ドル(約56億円)を調達した。

ここ数年、DopplerやBragiなどの参入によりヒアラブル業界は盛り上がりを見せている。アップルがiPhone 7でイヤホンジャックを廃止したことは、これらのメーカーにとって追い風になるだろう。Dopplerの新製品「Here One」のウェブサイトを見ると、「No headphone jack? No problem(ヘッドホンジャックがなくても大丈夫)」という文句が目を引く。

現在のドップラー社の売上は数億ドル程度だが、Here Oneが正式リリースされれば大幅に増え、2017年には1億ドル(約112億円)に達すると見られる。「我々は次世代のアップルを目指している」とクラフトは力強く語った。

編集=上田裕資

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