有意義な休暇はパフォーマンスを上げる、DeNA流「健康経営」

ディー・エヌ・エー CHO室 室長代理、平井孝幸

健康経営の先進企業は、社員の休暇をどう捉えるのか。CHO(Chief Health Officer)室の指揮のもと社員の有休取得を推進するDeNAの取り組みを聞く。

「休暇とは、リフレッシュしながら新しいことが学べる機会。ただ休むのではなく、ワクワクする体験で自身の興味や関心を広げる充実した時間を過ごすことだと考えています」

ディー・エヌ・エー(DeNA)で社員の健康をサポートするCHO室を立ち上げた平井孝幸 室長代理は、休暇を社員のヘルスリテラシーを高める一つの手段にできると語る。「一緒に働く社員が健康であってほしい」という考えから設立したCHO室は、食事、運動、睡眠、メンタルの4つを軸に、健康を通して社員の生産性の向上を目指している。

平井が社内の有給休暇の取得率について調査したところ、「休みをとれるタイミングがない」「休みをとっても特にやることがない」といった声が多く挙がったという。そこで、「有休ハワイ」というプロモーションを実施するハワイ州観光局とDeNAトラベルに声をかけ共同で開発したのが、社員向けの有給休暇を使ってハワイへ行く健康ツアー企画だ。社員が有給を取得して行きたくなる場所を第一に考えた。

ハワイの地産地消の食事や、海や山に囲まれた自然の中で歩く・走るなどの身体的なアクティビティが体験できる。普段運動しない人でも、ヨガを体験する絶好の機会だ。

「歩くことは、誰でもできる身近な健康法です。正しい早歩きを20分するだけで、病気になりづらくなると言われています。ハワイは景色がきれいで歩くのに最適。もちろん、海や山など景色のいいところだけでなく、例えばダウンタウンを歩くことで今までと違ったハワイを知る機会にもなります」

知らない土地を歩くことで新たな気づきや発見をもたらす効果は大きい。歩くことで思考が整理されたり、スマホの電波が入らない場所に行くことで日々の喧騒から抜け出すデジタルデトックスにもつながったりする。

IT企業の多くはスピード感が求められるため交感神経が優位になりがちだ。しかし、ハワイ島の風や光、空気の透明感といった自然を味わうことによって、副交感神経を優位にしてくれる。オフィスと自宅の往復では得られないリラックス効果がある。平井は、こうしたウェルネス企画をどのように仕掛けていくかを日々考えているのだ。
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文=江口晋太郎 写真=青木倫紀

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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