中国経済が“崩壊”するよりも前に、その危機は訪れるかもしれない。一党独裁の中国は、内部の矛盾を取り繕うことができる(たとえ永遠にではなくても)。しかし、欧州にそのぜいたくは許されない。それどころか、欧州連合(EU)加盟28か国全ての同意を得なくてはならないのだ。これは、不可能な仕事である場合も多い。
それを示す最近の例が、EUとカナダとの「包括的経済・貿易協定(CETA)」の正式調印の見送りだ。人口350万人ほどのベルギーの一地域が、約5億人を擁するEUの決定を左右したのだ。そのベルギーのワロン地方は、投資家らが各国政府を協定違反で提訴することを認める可能性を生む独立仲裁機関の設置に懸念を表明している。これは、ブレグジットの悪影響の一つともいえるだろう。
脅威はいくつもある
欧州には別の脅威もある。新たなギリシャ支援に加え、ポルトガル政府が経済を好転させられなかった場合の同国に対する支援の可能性だ。さらに差し迫った深刻な脅威は、イタリアで12月4日に予定されている憲法改正の是非を問う国民投票だ。
この国民投票は、米大統領選の影に隠れてあまり注目されてこなかった。だが、体制や構造全体に多大な脅威をもたらす問題だ。マッテオ・レンツィ伊首相が訴える憲法改正にイタリア国民が反対すれば、反EU派に力を与えることになり、結果としてEUからの離脱という結果にもつながりかねない。
イタリア経済はEU域内で第3位の規模であり、同国の債券市場は世界弟3位の規模だ。10年債利回りは今年8月のばかげたほどに低い1.04%からは上昇しているものの、それでも10月27日の時点で、1.585%と相変わらず話にならないほどの低水準だ。