アマゾン、成長神話の限界 5億ドルの損失をEコマースで計上

アマゾンCEOのジェフ・ベゾス (Photo by Drew Angerer / Getty Images)

今年6月の時点で筆者は、アマゾンが成長の限界を迎えたのでないかという記事を執筆していた。急成長を遂げた小売業界の巨人も、今後下り坂に向かうのではないかと。

今年7月28日発表の第二四半期決算(4〜6月)の時点で、アマゾンは輝かしい実績をあげていた。5期連続の黒字を計上し、クラウド部門のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は成長を続けている。以前は慢性的な赤字体質だったネット通販事業も黒字に転換した。

しかし、10月27日発表の第三四半期(7〜9月)決算の発表後、アマゾン株は5%の下落となり、ジェフ・ベゾスは30億ドル分の資産を1時間で失った。

アマゾンが不調かというとそうではない。今四半期の純利益は前年同期比3倍超の2億5,200万ドル(約265億円)。売上高は29%増の327億1,400万ドルに達し、今年最終四半期には420億ドルから455億ドルを視野に入れている。

では、株価の下落は何を意味するのか。アマゾンの事業は2つに分けられる。急成長を遂げるクラウド事業(AWS)と、巨大だが収益性の低さが懸念される小売り部門だ。AWSは売上高では小売り部門をはるかに下回るが、堅調な推移を見せている。

米国外のコマース事業は赤字

仮にAWSの利益の伸びが、消費者サービス部門の損失をカバーできなくなれば、アマゾンがクラウド事業においてマイクロソフトやグーグルに先んじるための資金が枯渇する。変化は一夜にして訪れるわけではないが、グーグルのクラウド事業はアマゾンより低コストだ。

今四半期のAWSの営業利益は8億6,100万ドル(約902億円)で、前年同期比で2倍近い伸びとなった。一方で北米におけるコマース事業の営業利益は2億5,500万ドル。アマゾンプライム会員は38%の伸びだが、高コスト体質は変わらず、北米以外のコマース事業は5億4,100万ドルの損失を計上した。

AWSは55%の伸びを記録したが、同期間にマイクロソフトのクラウドAzure Cloudは102%の伸びだ。

栄枯盛衰は企業の宿命だ。17年前、人々は今後の世界経済をマイクロソフトが支配すると恐れていた。2006年に全盛をきわめたテレビ録画サービスTiVoも、今やすっかり過去のものになった。

アマゾンは今後も小売りやテクノロジー分野で巨大企業であり続けるだろう。しかし、その優位性も完全無欠なものではあり得ない。

編集=上田裕資

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