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2016.10.14

遅すぎた共和党の「トランプ離れ」 わいせつ発言、なぜ決定打に?

photo by Tom Pennington / gettyimages


もし自分がジョン・マケインのような、ここ数日の間にトランプ不支持を打ち出した共和党幹部だったら、この友好関係の輪はどうなるか想像してみてほしい。イスラム教徒やメキシコ系、そして黒人(トランプは黒人に対し自身の不動産物件への入居を拒否していたと伝えられている)といったグループは、どの輪に入るだろうか? ほとんどの場合は、中心から程遠い輪に入るだろう。

中心部の輪はおそらく、自分の妻や子供、親といった家族だ。その一歩外側には、自分と似た人々、つまり、保守派の白人男性がおり、その多くがキリスト教徒や親しい友人だろう。その次にくるのが、顔見知りではないものの、自分と同じアイデンティティー(同じ宗派や保守系キリスト教の価値観、出身地など)を持ち、感情的につながっている人々だ。

こうしたアイデンティティーとそれに伴う感情の共有により、人々はその集団に属していることによる優越感を得られる。そのため、人々は自分のアイデンティティーが持つ優位性を際立たせ、その優位性を脅かす人物を罰しようとする。優位性を保つ手段の一つとして、外集団のステレオタイプを喚起して通じてその評価をおとしめる行為に及ぶ場合もある。

トランプが限度知らずの暴言を繰り返してきたのにもかかわらず、共和党内からの支持を維持できたのは、彼の発言が共和党員のアイデンティティーやその優位性を脅かすものではなかったからだ。トランプは、共和党員らの中心部に近い輪の中に居場所を確保し、グループ結束の源となっている感情的承認を受けていた。共和党員による支持は、トランプ自身の魅力というよりは、彼の共和党指名候補としての役割や、保守主義やキリスト教の価値観を重んじるとうたう姿勢によるものが大きかった。

トランプが第2次世界大戦下での日系人の強制収容を肯定するかのような発言をした際にも、共和党幹部や熱心な支持者らが大きな反発を示さなかったのは、トランプがこうしたアイデンティティーや強い感情的つながりを保持していたからだと言える。

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翻訳・編集=遠藤宗生

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