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2016.10.14

遅すぎた共和党の「トランプ離れ」 わいせつ発言、なぜ決定打に?

photo by Tom Pennington / gettyimages

米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプが、魅力的な女性にはいつも強引に迫っていると自慢げに語った2005年撮影の映像が浮上したことを受け、ついにトランプを見捨てる同党幹部が続出する事態となっている。だが、多方面から聞かれているのが、「なぜいまさら?」という疑問だ。共和党員らは、これまでメキシコ人やイスラム教徒らを中傷してきたトランプを、なぜ支持し続けていたのか?

問題の映像公開後、ジョン・マケインを筆頭とした共和党員らが次々とトランプ支持撤回を表明し、一部はトランプの大統領選撤退を呼び掛けるまでに至った。このタイミングに首をかしげている人は、共和党員にとっての「内集団」と「外集団」は誰なのか、という問いを考えてみるといいだろう。

この二つの言葉は、「社会的アイデンティティー理論」からの用語だ。この理論では、人には周りの人々をカテゴリー化する強い傾向があり、その過程で自らをあるカテゴリーの一員として捉える一方で、他のカテゴリーには属さないと考えるようになるとされる。

自らを特定のカテゴリーに分類することにより、人は自分の集団が他の集団よりも優れている状態を確保したいと思うようになる。自分が下位集団に属していると感じれば、他の集団への移動を試みる場合もある。だが自分の集団が「勝ち組」だと感じれば、大半が現状を維持する。自分の集団の優位性を確保するため、集団内のルールを破る人物をグループから排除することもある。

こうした考え方は、交友関係の輪と置き換えてみるとわかりやすい。今年の大統領選では、自分たちの声だけがこだまする残響室の中にいるかのような人々が話題となってきた。仲間の輪の中に閉じこもり、外の意見に耳を傾けられない人々だ。

だが実際には、私たちのほとんどは、同心円状に重なった複数の交友関係の輪の中にいる。親交のある人々のうち、自分に一番近い輪に入るのは誰だろうか? 周りの人々を自分との近さに応じてさまざまな輪に分類するとしたら、誰をどこに配置するだろう?

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翻訳・編集=遠藤宗生

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