石灰石を使った「素材ビジネス」で資源問題の解決に挑む

山崎敦義(Photo by Mizuaki Wakahara)

「Plug and Play(プラグ・アンド・プレイ)」、新素材・梱包部門アクセラレーションプログラムに、TBMが日本企業として初めて参加権を得た。

Yコンビネーター、500スタートアップスと共に“シリコンバレー三大インキュベーション”と呼ばれ、PayPal、Dropboxといった世界的なスタートアップを輩出した、テクノロジーアクセラレーター「Plug and Play(プラグ・アンド・プレイ)」。現在、300以上の企業、180以上のエンジェル投資家やベンチャーキャピタル、地元のスタンフォード大学をはじめMITやコーネル大学といった一流大学や研究機関を巻き込み、技術系スタートアップの起業から成長までをサポートしている。成功するためのすべてのリソースが提供されており、“究極のエコシステム”とも呼ばれている。

今年7月、このプラグ・アンド・プレイに、日本企業として初めて新素材・梱包部門アクセラレーションプログラムへの参加権を獲得したスタートアップが現れた。新素材「LIMEX(ライメックス)」の研究開発、製造・販売を行うスタートアップTBMだ。同部門のピッチイベントにてファイナリストに選出され、なかでも1位となった。

「ピッチ会場の熱気とプレゼンに対する熱心な質問によって、この場所から事業を大きく成長させられるという実感を得た」

そう語るのは、TBM社長の山崎敦義だ。2008年に石灰石を原料とする素材と台湾で出合い、素材ビジネスを始めた彼は、事業拡大を目指し、11年にTBMを創業。現在開発を進めるLIMEXは、水や木を一切使わず、石灰石を原材料に、紙やプラスチックの代替物を製造することのできる新素材。技術自体を輸出し「現地にLIMEXの工場を建設する」ことで世界市場を視野に入れる。

「石灰石は、世界中に安価で大量に存在する天然資源。LIMEXによって、エコロジーとエコノミーを両立させた“素材革命”を起こし、『水問題』をはじめ世界で深刻化する天然資源の枯渇問題を解決するのが、我々のミッションだ」

壮大なビジョンを掲げるTBMは、13年に経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業の「先端技術実証・評価設備整備費等補助金」に採択されたことで、事業を拡大。今年7月には米国で子会社を設立し、積極的にグローバル展開を進めている。

「世界一流のネットワークをはじめ、様々な支援を得られたことは、グローバルに挑戦できる機会につながる。今回の選出を足がかりに、さらに世界展開を加速させていきたい」

日本発世界で“素材革命”を目指すTBMの挑戦が本格的に始まる。

山崎敦義◎1973年生まれ。20歳で中古車販売業を起業後、複数の事業立ち上げを行う。2011年にTBM設立。TBMは「Times Bridge Management」の略で、同社の理念である「時代の懸け橋となる企業」を表している。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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