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2016.09.28

米パラマウント買収に頓挫の中国ワンダ 大失速の懸念

ワンダグループ 会長 王健林 photo by Hong Wu / gettyimages

中国のワンダグループ(大連万達集団)は米パラマウント・ピクチャーズへの出資計画がとん挫した数日後、映画製作でソニー・ピクチャーズと提携することを発表した。このディールは、「中国のディズニー」を目指すワンダにとって“残念賞”とも呼ぶべき成果かもしれない。

ハリウッドの6大映画企業の一社であるパラマウントは今年初め、株式の売却意向を表明し、ワンダは出資に強い意欲を持っていた。しかし、パラマウントは内部紛争の末に株式売却計画を凍結。ワンダにとっては期待はずれの結果となった。

そして9月23日、ワンダはソニーの映画に出資する戦略提携を結んだと発表した。しかし、その内容は、ハリウッドと中国企業との間ではありふれた映画の「共同制作」であり、資本提携ではない。報道によるとワンダは今後、提携作品に対し10%を上限とする出資を行うという。つまり、作品のコントロール権はソニーが握っており、ワンダの役割は限定的な範囲にとどまるということだ。

ワンダは昨年、ハリウッドの映画製作会社レジェンダリー・ エンターテインメントを35億ドル(約3,522億円)で買収。また、別のワンダ傘下の米映画館大手AMCは、今年初めに欧州の映画館チェーン英オデオン・アンド・UCIシネマズを取得したのに続き、米同業のカーマイクも買収しようとしている。

この体制は、ワンダにとって強力なプラットフォームとなるはずだったが、肝心の映画作品の供給体制を増強できなかったことは、同社にとって大きな痛手と言える。

テーマパーク事業にも焦り

そしてワンダのエンターテインメント事業の中で、第3の柱になるのがテーマパーク事業だ。ワンダは巨大リゾート「ワンダ・シティ」の建設をこの2年で加速。上海ディズニーの開園から、わずか3か月に上海から500キロ離れた合肥に36億ドル(約5,232億円)を投じた巨大施設をオープンした。同社は2020年までに中国全土に最大20ヶ所のエンタメ施設の建設を計画している。この動きには、ディズニー追撃を焦るワンダの姿勢が現れている。

映画館の運営は、ワンダの映画事業を中国内外でサポートするだろうが、映画がヒットしなければリスクになる。そしてリゾートに関して言えば、中国の地方都市にパークを乱立させても、観光客を呼び込めるとは思えない。筆者個人はワンダ・シティの多くが巨額資金の無駄遣いに終わると確信している。

編集=上田裕資

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