ファッションコマースを革新するMetail社 「VR試着」でアジア進出の野望

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バーチャル試着室を提供するスタートアップ「Metail」の創業者、トム・アデユーラはかつてオンラインゲーム会社の開発責任者を務め、ケンブリッジ大学の研究者とコンピュータビジョン技術を使ったゲームの開発を試みていた。しかし、現在の妻がオンラインショッピングで感じた不満を彼に打ち明けたことが転機となり、起業の道を歩むことになった。

アデユーラの妻は、オンラインで購入した服のサイズや色が合わないことに苛立ちを覚えていた。そこで、アデユーラはコンピュータビジョンの技術を用いれば、こうした悩みを解決できるのではないかと考えた。「私はずっと自分の会社を立ち上げたいと思っていたが、これだと思えるビジネスモデルにようやくたどり着いた」と彼は当時のことを振り返る。

Metailの創業は2008年。同社は人の体形をオンライン上で再現する「MeModel」という独自技術を開発し、立ち上げから18か月で特許を取得した。これにより2010年にシードマネーを獲得し、事業が軌道に乗った。

Metailではユーザーが体のサイズを入力すると、体形を忠実に再現したダミーがサイト上に作られる。気に入った服をダミーに試着させれば、実際に近いフィット感を確かめることができる。ユーザーにとっては自分に合った服を見つけることができ、店舗にとっては返品率が下がる。しかし、膨大な数の新製品を一つ一つ正確に測定して登録するのは店舗にとって大きな負担であるため、Metailが作業を代行するサービスを安価で提供している。

「我々の目標は、世界中のあらゆる人と服をデジタル化することだ」とアデユーラは言う。Metailは過去5年間でテスコ、ザランド、ハウスオブホランドなどの世界的な小売企業と提携し、大規模な資金調達にも成功。急速な成長を遂げた。最近ではアジア企業との提携も視野に入れている。

データ提供でマネタイズの道も

Metailの収益源は、小売企業から得るMeModelのライセンスフィーと売上に対するコミッションだが、今後はバリューチェーンの上流にも進出しようとしている。「我々はユーザーに最新のファッショントレンドに関する情報を提供していきたい」と彼は話す。

今後はユーザーのクローゼットにある服の中からその日の天気に合ったコーディネートを提案したり、スタイリングサービスの提供を検討しているという。また、Metailが所有する豊富なユーザーデータを提供し、マネタイズを図ることも可能だ。

MeModelの登録ユーザー数は75万人を超えた。これは、今後Metailがグローバルな小売企業と提携を推進していく上で強力な武器になる。ファッション系Eコマースではイギリスの「Asos」が世界で最も先駆的なブランドの一つと言われるが、MetailはAsosを超える成長を成し遂げる可能性を十分秘めている。

編集=上田裕資

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