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2016.09.04

不眠症のオンライン療法、その効果を疑ってみるべき理由

Monkey Business Images / shutterstock

このところ、「不眠症の新たな治療法」として認知行動療法(CBT-I)が注目されている。さほど新しい治療法ではないが、2016年2月に米内科学会が推奨したことで評判になった。

訓練を受けた認知行動療法士がまだ数千人しかいないことが問題ではあるが、そこでオンラインの治療プログラムが、その不足を補っている。

CBT-Iの本質は、否定的な思考パターンを再構築して行動を変えること。不眠症を引き起こしている否定的な考え方を見直すという考え方だ。オンライン治療の賛成派は、クリニックに足を運んだり薬を服用したりする必要がなく、簡単であると主張する。

合理的な方法に思えるし、わずか40ドル程度(治療コースによっては数百ドルの場合も)ならば試してみてもいいと思う。それに2月に発表された研究報告でも、オンラインCBT-Iは対面でのCBT-Iと同じくらい効果があるという結果が示された。

効果があるものならば試してみるべきだと思うが、この商品(そう、これは商品だ)については、懐疑的になる理由がいくつかある。

まず前述の2月の研究報告だ。研究ではオンラインCBT-IとクリニックでのCBT-Iを比較した15の臨床試験結果を分析。「オンラインCBT-Iは不眠症の成人の睡眠を改善させる効果がある」と結論づけた。

だが具体的にどの程度の効果があるのか。「治療開始前の平均睡眠時間は5.7時間で、オンラインCBT-Iを行った場合は、行わなかった場合よりも約20分、睡眠時間が増えた」という。これは臨床試験の参加者たちの自己申告を基にしており、彼らが正しく報告していると仮定した結果だ。いずれにせよ、20分の増加は大きな成果だろうか?

コンピューター支援型のCBTが本当に、約束どおりの成果をもたらすのかも問うべきだ。これについては、成果が意味のあるものなのか、持続可能なものなのかを疑問視する研究報告もある。

うつ病などの精神疾患の場合、対面での治療に比べると、オンライン治療の成果は芳しくない。最初のうちは効果が出ても、患者がその後もオンライン治療を続ける可能性は対面治療の場合よりも低い。
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編集=森 美歩

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