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2016.08.30

現代のゴールドラッシュ「シリコンバレーの繁栄」が若者らを魅了する理由

Maglara / Shutterstock.com

シリコンバレーが米国のミレニアル世代を魅了している。学生たちの理想の企業ランキングの上位には何年も前からグーグルやアップル、フェイスブック、テスラなどのシリコンバレーの大企業が入っている。

ミレニアル世代がテック業界を好むことは周知の事実だが、単にクールなガジェットに魅力を感じているわけではない。シリコンバレーはミレニアル世代が思い描く理想の世界を実現したものなのだ。それは大胆なアイデアが称賛され、楽観的な考えと知性が満ち溢れ、誰もが偉大さを求める世界だ。しかし、シリコンバレーが作り出すものが本当に世界を豊かにしているのかどうかについては、意見の別れるところだ。

ここ数年のシリコンバレーはまるでゴールドラッシュだ。雇用と所得が爆発的に伸び、この地域で働く人の年齢の中央値は28~31歳(テック業界全体では40歳)。エリート大学でMBAを取得した学生はウォール街よりもシリコンバレーを就職先に選ぶようになってきている。有名インキュベータのYコンビネーターの入社試験に申し込む人の数は2013年以降で2倍に増えた。シリコンバレーはカネが行き交い革命的なブレイクスルーが生まれる夢の国のような世界の様相を呈している。

もちろん、現実的に考えてシリコンバレーで働けるミレニアル世代は一握りだが、いつの時代も、世代を象徴するのは優秀な人材が何を求めているかだ。ミレニアル世代が意義ある仕事を好むのはよく知られており、彼らが大学に入学したころからFBIやCIAなどの政府機関や非営利団体が理想の雇用主の上位に入ったのも偶然ではない。

常に楽観的スタンスでイノベーションを推進

シリコンバレーの魅力は待遇だけではない。ミレニアル世代はテクノロジーこそが世界を良くするものだと考えてきた。シリコンバレーではあらゆる問題に数学とロジックを当てはめて考えることをよしとし、トップ企業にはそれができる優秀な人材が集まり、競争や対立ではなく効率的な問題解決が常に好まれる。

そしてシリコンバレーの特質と言えるのが、極めて楽観的であることだ。グーグルは不老不死の医薬品の研究を行っている。エアビーアンドビーの幹部は、同社がノーベル平和賞を受賞することを願っているとフォーブスに語った。ミレニアル世代の先駆けであるプロジェクト管理ツールAsana(アサナ)の共同創業者は、2014年に行われたテックカンファレンスで、自分たちには「100年前の国王や大統領よりも世界を変える力がある」と話した。

楽観性は政治信念にも表れている。この地域には昔ながらの党派の考え方はない。テック系エリートは政府と自由市場にとって良い考え方を強く支持しているという調査結果が出ている。これは社会が必ず不快な妥協を避けるという楽観的考え方からくるイデオロギーだ。それはウーバーの運転手が大儲けをし、すべての働き先のないタクシー運転手が税金で収入を保証してもらえるような世界だ。シリコンバレーでは倫理観や宗教を不要にするような、ポジティブがポジティブを生む奇跡が存在する。

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編集=上田裕資

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