医学誌ヘルス・アフェアーズに先月発表された論文で、ジョージア大学のデービッド・ブラッドフォードとアシュリー・ブラッドフォードの父娘チームは、これまでに医療用大麻を合法化した州での処方薬の利用状況を詳細に調査。2010~13年のメディケア(米政府の高齢者・障害者向け公的医療保障制度)関連データを収集し、以下の二つの疑問に取り組んだ。
(1) 医療用大麻で改善する可能性のある症状を持つ患者のうち、どの程度が処方薬の代わりに医療用大麻を選択しているのか
(2) 医療用大麻は、メディケア関連支出に対しどれほどの影響を与えているのか
結論から言うと、17州で医療用大麻が合法化されていた2013年、メディケアは1億6,500万ドルの支出削減を果たしていた。もし米国の全州が大麻を合法化した場合、単純計算してこの3倍に相当する年間5億ドル(約500億円)の節約ができることになる。(もちろん、実際の節約幅は各州の人口によって異なる。民間保険を含めれば、節約額は大幅に増えるだろう)
ブラッドフォード親子は、大麻が「代替治療法として利用できる可能性のある」症状に焦点を絞り、メディケアの「パートD」データベースから8,700万件以上もの処方箋を調査。対象とされたのは、不安、うつ、緑内障、吐き気、痛み、精神病、発作、睡眠障害、痙(けい)性の9症状だった。
論文によると、このうち大麻が症状改善につながることを示す臨床的証拠が最も多いのは痛みで、その信頼度は「中程度」とされている。その他の8症状についての臨床的証拠の信頼度は「低い」または「非常に低い」と評価されている。
これら9症状のうち、8つで処方薬利用が減っていた。中でも最も大きく減少したのは鎮痛剤で、医療用大麻を合法化している州では、合法化していない州と比べ、医師1人当たりの鎮痛剤処方が11.5%減、件数にして3,645件少なかった。これは、統計学上でみても大きな意味を持つ差だ。さらに、うつと発作に対する処方薬利用も大きく減少していた。