リオの次は月だ! 世界月面探査レースに挑むHAKUTOの夢

ispaceの代表・袴田武史(photo by Ran Iwasawa)

これまで宇宙開発といえば、大規模な国家プロジェクトとして展開されてきたが、近年その流れに変化があらわれはじめている。民間の企業や経営者が、未来を見据えたビジネスとして、これに乗り出そうとしているのだ。

そんな「民間宇宙時代」の象徴ともいえるプロジェクトが、2007年に始動したGoogleがスポンサードし、アメリカのXプライズ財団が運営にあたる、人類初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エクスプライズ)」だ。

同レースのミッションは3つ。まず1つ目は、「探査用ロボット(=ローバー)を月面に着陸させること」、次は「着陸点から500メートル以上移動すること」、最後は「高解像度の動画や静止画データを地球に送信すること」だ。賞金総額は3000万ドル(約30億円)、優勝チームには賞金2000万ドル(約20億円)が贈られる。

すでに、アメリカ、イスラエル、イタリア、マレーシア、ドイツ、ハンガリー、ブラジル、カナダ、チリ、インドなどの世界各国から16のチームが参加して鎬を削っているが、日本からも唯一参戦を果たしたチームがある。宇宙スタートアップベンチャー ispace代表の袴田武史率いる、チームHAKUTO(ハクト)だ。

袴田は、Googleが月面探査レースを支援することについて、次のように語る。

「Googleが賞金を出す理由のひとつは、次世代の教育のため。レース形式の民間支援プロジェクトを立ち上げれば、月や宇宙に対する知識をより深く得ることができ、科学技術の発展にも寄与できる。また、これまで国家規模で行われていた月面探査プロジェクトに、民間が、しかも大企業ではなく小さなスタートアップが挑戦するという構図に、Googleは大きな魅力を感じています」

「民間による月面探査レース」、「宇宙開発スタートアップへの大規模な支援」というプロジェクトは、Googleの名をさらに高め、その広告効果も絶大だ。加えてGoogleは、ストリートビューの月バージョンともいえる「Google Moon」なる月面検索サービスも2005年から提供している。Google Lunar XPRIZEで得られた画像や動画は、当然Googleが公開する権利を持っており、今後、自社サービスの向上に資するという判断があるのかもしれない。

チームHAKUTOの由来

さて、人類初の月面探査レースに挑む日本で唯一のチームHAKUTOだが、チーム名の由来は「白兎(はくと)」、つまり白いウサギ。「月にウサギがいる」といったおとぎ話から名づけられた。また日本神話に登場する「因幡の白兎」にもちなんでいる。HAKUTOが走行実験を行う鳥取県の鳥取砂丘は同神話の発祥の地でもある。

月面をめざす「白いウサギ」。袴田はチーム結成のいきさつについて次のように語る。
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文=河鐘基 編集=稲垣伸寿 写真=岩沢蘭

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