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2016.09.03

ベビーブーマー世代が支出を控える傾向に、米経済への影響は?

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毎日およそ1万人のベビーブーマー世代が65歳を迎えている。彼らが退職後、こぞって支出をやめてしまったら、アメリカ経済にはどのような影響が及ぶだろうか。

もちろん、そんなことはあり得ない。だがシンクタンクのJPモルガン・チェース・インスティチュートが発表した新たな報告書によれば、ベビーブーマー世代による支出は大幅に減少しつつあり、今後さらに減る可能性もある。

同報告書によると、65歳以上のアメリカ人による消費支出の伸び率は、この2年で7.6%も下落。日々の支出については、2014年4月から2015年4月の1年間で4.4%、2015年4月から2016年4月にかけての1年間でも4.4%減少した。

これは同シンクタンクが2016年4月までの2年間にわたって、全米のJPモルガン・チェースの顧客5,400万人以上による160億件以上のトランザクションを検証して導き出したデータだ。高齢者による消費支出の低迷が最も深刻だったのは、西部と南部だった。

少なくとも今のところは、そのほかの世代(特にミレニアル世代)による消費支出の増加が、高齢者による支出減少分を埋め合わせる助けになっている。だが高齢者が支出を控える傾向が今後も続けば深刻な脅威になりかねない。ベビーブーマー世代は、アメリカの個人消費全体の約18%を占めているからだ。

JPモルガン・チェース・インスティチュートのディアナ・ファレルCEOは、「ベビーブーマー世代は定年を迎えつつある。ある程度の懸念を抱くのは当然だ」と指摘する。

その“懸念”には、収入の減少や不安定化(社会保障給付の増額が行われなかった)、それに退職プランが十分ではないことなどが含まれる。ファレルによれば、現在は高齢者の約25%が収入を仕事に頼っている。「ベビーブーマー世代は概して、退職に向けた備えを十分に行ってきていない」と彼女は言う。

こうした理由が、高齢者がウーバーやエアビーアンドビーなどのオンラインプラットフォームで年金収入を補う事態につながっている。2015年9月時点で、高齢者の約1%(つまり40万人以上)がこうしたオンラインプラットフォームから収入を得ている。ウーバーによれば、ドライバーの約24%は50歳以上だ。

またJPモルガン・チェース・インスティチュートの分析によれば、こうしたオンライン労働市場を利用する高齢者は、概してより若い世代よりもオンライン労働市場への収入依存度が高い。また彼らの毎月の収入総額の変動幅は約20%だという。

もちろん、働く高齢者の増加は、彼らが退職後の蓄えでは生活していけないというだけではなく、より長生きに、より健康になっていることの証でもあるかもしれない。ただ、一つ確かなことがある。もしもベビーブーマー世代が財布の紐を引き締め続ければ、アメリカ経済全体が行き詰まりを感じることになるということだ。

編集=森 美歩

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