人間より記憶力のいいチンパンジー、「京大のアユム」をめぐる考察

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チンパンジーなどの霊長類の知性と行動は、進化によって人間に近づいているのだろうか。質問サイトQuoraに寄せられた質問に対し、ジョージア州アトランタにあるエモリー大学の霊長類学者フランス・デゥヴァール教授が答えてくれた。下記が教授の答えだ。

類人猿は元々の生息地である森にとどまってきたのに対し、人間は森からサバンナに出た。そのため類人猿の骨格や行動の進化は人間に比べて限定的だった。我々、人類の方がより進化したといえるかもしれない。

しかし、現在の類人猿も彼らの祖先と同じではない。チンパンジーやボノボも、800万年前から600万年前の彼らの祖先から大きく変化している。例えば人間の間でエイズが広まるずっと前から西アフリカのチンパンジーにはHIV-1への耐性が備わっていたなど、彼らのほうがが進化している部分もある。人間は免疫機能については類人猿に大幅に後れを取っているのだ。

人間や類人猿はそれぞれの生活で、経験的知識に基づく特性を発展させてきた。人類が最も優れた存在だという自然の法則は存在しない。京都大学で研究対象となった若いオスのチンパンジーのアユムは、数字を記憶する課題において人間よりも優れた結果を出している。この課題は一瞬だけランダムに表示される1から9の数字の場所を記憶するもので、アユムの記憶力は人間のそれよりも格段に高いことが証明された。

アユムの優れた記憶力は、人類が既に失ってしまった能力の再現なのか、チンパンジーが進化によって獲得した特性なのか。そのどちらであるかは分かっていない。

編集=上田裕資

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