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2016.08.22 17:00

ソニーの新規事業創出プログラム、SAPの背景には何があるのか?

(左)ソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹 (中央)ソニー新規事業創出部担当部長 小田島伸至 (右)ソニー新規事業創出部wena事業室統括課長 對馬哲平(photographs by Masafumi Maruyama)

(左)ソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹 (中央)ソニー新規事業創出部担当部長 小田島伸至 (右)ソニー新規事業創出部wena事業室統括課長 對馬哲平(photographs by Masafumi Maruyama)

ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」はこれまでに数多くの製品を生み出し続けてきた。なぜ、新規事業の種をつくり続けられたのか。その背景には何があるのか紐解く。

2016年1月、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」。ソニーの展示ブースには、新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」が生み出した製品が数多く並んでいた。

電子工作ブロック「MESH」、文字盤とベルトの柄を替えられる腕時計「FES Watch」、電子ペーパーを用いて多数の家電を操作できる多機能リモコン「HUIS(ハウス)リモートコントローラー」、5種類の香りを持ち運び、どこでも香りを楽しめるスティック型アロマ噴出器「アロマスティック」ー。いずれもソニーの既存事業では想像できない、新たな分野の製品だ。

会場で行われた記者会見で、平井一夫社長は、14年4月からはじまった社長直轄プロジェクトの現状について次のように話した。

「SAPを通じて、これまでにない商品が出てきたり、新たなビジネスを立ち上げたりといった成果につながっている。小粒かもしれないが、いままでのソニーにはなかったもの、やらなかったものを出している。ソニーという会社は、こういうことをやる会社であるという点を、今回のCESで見せられた」

新しい価値を提供する、そして、これまでに踏み入れていない分野に参入するー。ソニーがこうした新たな製品を生み出した背景には、大企業の中で新規事業を生み出し、育成していく組織的な仕組みがあった。平井社長直轄の「SAP」だ。社内イノベーションの重要な役割を担う同プログラムは、どのように生まれたのか。そこには2人の社内起業家(イントラプレナー)の姿があった。

約2年間で5万人以上が関与

「いいんじゃない?君がやるんだよね」

新規事業創出プログラムSAPが大きく前進したのは、現・新規事業創出部担当部長で、同プログラムの設計・運営を担当する小田島伸至への一言がきっかけだった。その言葉をかけたのが、現在、執行役EVPでソニーモバイルコミュニケーションズ社長、ソネット社長を務める十時裕樹だった。

小田島は海外赴任先・デンマークで、液晶ディスプレイ販売事業を”ゼロイチ”で立ち上げ、わずか4年で売上高数百億円規模まで拡大させた経験がある。だからこそ、11年にソニー本社の事業戦略部門に転属になってからは「事業創出に関わることで貢献したい」という思いがあった。

しかし、その思いとは裏腹に、新規事業の”ネタ”があがってこない。
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文=Forbes JAPAN編集部

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