テクノロジーの進化で滅びる職業、役員秘書の雇用は40%減少

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テクノロジーは人から雇用を奪うと言われるが、実際のところはどうなのだろうか。むしろ新たな仕事を多く創出しているという意見もあり、専門家の中でも意見は分かれている。そこで、アメリカにおける実際の雇用データを検証してみたところ、興味深い事実が浮き彫りになった。以下に今回明らかになったレンドを紹介する。

コンピュータ産業に限ってみれば、この5年間で雇用はそれほど増えていない。米国で2015年5月時点でソフトウェア開発やデータ管理といったコンピュータ関連の仕事に従事している人の数は385万人だった。2010年の実績と比較すると、業界の雇用者数は21%増加し、677,000人の純増となっている。

しかし、全産業では同じ期間に1,080万人分の新たな雇用が創出されており、コンピュータ産業が占める割合は7%に過ぎない。

オンライン調査業界の雇用は93%増加

ホワイトカラーの職種全般に目を向けると、ソフトウェアの進化によってサービス提供者の生産性が向上した結果、需要も大幅に増えて新たな雇用を多く創出している。2010年には、「Qualtrics」や「SurveyMonkey」のように手軽で格安にオンラインでアンケートを実施するサービスが今ほど普及していなかった。

当時、市場調査を行うアナリストやマーケティング専門家の数は262,000人だった。ネット投票やデジタルマーケティングが身近になった今日、同分野の雇用者数は506,000人と、93%も増加している。

ソフトウェアの進化によって雇用が大幅に増えたもう一つの職業が、イベントプランナーだ。招待状を封筒に入れたり、大量の電話をかけるといった本格的なイベント企画は、これまで富裕層向けのサービスだった。しかし、これらの作業がデジタル化されたことで需要が大幅に増え、この5年間でイベントプランナーの数は54%増の87,400人となり、31,000人分の新規雇用が生まれた。

これらのほんの一例に過ぎず、他にもグラフィックデザインや企業向け採用サービスなど、数多くの業界で同様の変化が起きている。

役員秘書の雇用は40%減少

職種によっては、テクノロジーの進化によって雇用が減少したケースも見られた。例えば、企業の役員秘書の数は2010年には113万人だったが、2015年には666,000人と40%近くも減少した。一部の要因は労働統計局が職種を再分類したことによるものだが、Siriやコルタナ、グーグルボイスといった新たなテクノロジーが役員秘書から仕事を奪ったという側面もある。

多くの場合、新たなテクノロジーが昔ながらの職業に取って代わるのには長い時間を要する。旅行代理業が良い例だ。今日、アメリカで旅行代理業に就いている人の数は67,000人で、5年前と比較して7%しか減少していない。筆者は個人の旅行にはオンラインサービスを利用しており、1995年以降は一度も伝統的な旅行代理店を使っていない。

しかし、今も多くの企業は伝統的な旅行代理店を使い続けている。旧態依然とした企業内のルールが変わらない限り、この業界は安泰なのかもしれない。

編集=上田裕資

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