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2016.07.30

アイスバケツチャレンジから2年、ALS研究に画期的成果

Photo by Scott Barbour/Getty Images

バケツに入った氷水を頭からかぶり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の支援を訴えるアイスバケツチャレンジは、もう遠い昔のことのように感じる。しかし、このキャンペーンを通じて集まった寄付金による数々の研究は、成果を出し続けている。

米ALS協会は7月25日、研究者たちがALS発症に関連のある遺伝子を特定したと発表した。これは、アイスバケツ・チャレンジで集まった寄付金によってもたらされた3つ目の重要な研究成果だ。

アイスバケツチャレンジでは、これまでに1,700万件もの動画がインターネットに投稿された。マサチューセッツ大学医学部のプロジェクト「MinE」は、このチャレンジを通じて集まった1億1,500万ドル(約120億円)のうち100万ドル(約1億円)を受け取り、この資金を使ってALSの発症に関わる遺伝子「NEK1」を特定した。今後これが治療法の研究における新たなターゲットとなる。

米ALS協会によれば、NEK1はALSの原因となる遺伝子としては最も一般的な部類に入る。全ALS患者の3%の発症に関連があるが、孤発性および遺伝性のALS患者の両方に確認される。

「アイスバケツチャレンジに貢献した全ての人の寄付が、研究に影響を及ぼしたことを示す成果だ。素晴らしい」と、米ALS協会のブライアン・フレデリックは英ガーディアン紙に語った。「プロジェクトMinEの取り組みはきわめて重要なものだ。この新たな遺伝子の発見は、ALSの理解を深める上で役に立つだろう」

ALSは、脳と脊髄にある神経細胞が徐々に壊れていく変性疾患。患者はALSと診断されてから2~5年以内に自発呼吸ができなくなり、死に至る。治療法はなく、同協会によれば10万人に2人の割合で発症する。

アイスバケツチャレンジを通じて、全米で250万人から寄せられた寄付金のうち7,700万ドル(約80.7億円)がプロジェクトMinEのような各種研究に充てられている。同チャレンジにはビル・ゲイツなどの大富豪、ステファン・カリー選手(バスケットボール)などのアスリートをはじめ、1963年にALSと診断された理論物理学者スティーブン・ホーキングなど幅広い人が参加した。

アイスバケツチャレンジについては、水の無駄遣いで無意味な「スラックティビズム(大きな労力や出費を伴わない自己満足的な社会運動)」だという批判の声もあった。また、氷水の冷たさにあえぐ人々の動画がALS自体への注目を薄れさせるのではという懸念や、実際の寄付につながらないのではという懸念の声もあった。

あれから2年。今回の画期的な成果は、それらの批判的な見方が間違っていたことを証明してみせた。

編集=森 美歩

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