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2016.07.28

北朝鮮化し始めた中国の言動 孤立路線の行きつく先は?

Denis Rozhnovsky / shutterstock

南シナ海の領海問題をめぐる最近の中国の言動は、まるで北朝鮮の国営朝鮮中央通信社(KCNA)のようだ。

南シナ海問題は当初、中国とその周辺国の間での主導力争いとして始まったが、間もなく中国と米国の経済力・軍事力誇示合戦へと発展した。

南シナ海での緊張は、中国が2年前に人工島を建造したことによって高まった。米国はこれを受け、人工島周辺に軍艦を派遣し、韓国駐留軍のミサイル能力を増強。これに対する中国側の対応は当初、米国の「国際法違反」を非難する声明発表や、自らが主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国らを味方につける試みに留まっていた。

だが中国はその後、米軍を「抑止」するためとして、係争海域への原子力潜水艦の派遣を宣言するという手段に踏み切った。中国の国営英字紙・環球時報は社説で以下のように述べている。

「戦略核ミサイルは軍事抑止力の基盤だ。保有核弾頭数が西側主要国よりはるかに少ない中国は、『効果的な核抑止力』の戦略を採用してきた。また、中国は核保有国の中で唯一、先制不使用を宣言している。これは、中国の核抑止力はその反撃能力にあるということだ。

一方で、中国の核抑止力は、米政府の対中政策策定において重要な役割を果たすべく、真正かつ効果的でなければならない。いかなる国が米国の持つ力を査定する時と同じように、中国は直ちに米空母の存在を考え、米国との直接軍事衝突を避けるだろう」

2013年からこの問題について審理していた仲裁裁判所は最近、中国の国連海洋法条約(UNCLOS)違反を認定する判決を下した。この判決は、中国が南シナ海で独自の航行規則を定めたり、世界の海上交通の要所である南シナ海の貿易路を制限したりする法的根拠を否定する内容で、フィリピンの密接な同盟国である米国にとって勝利となった。

国連安保理の常任理事国である中国は、この判決に従うものと思われた。だが中国政府は反対に強硬姿勢を強め、判決は無効だと主張。人工島の建造を継続する意向を表明した。

しかもロイター通信によれば、中国政府高官らは、問題の海域を外国艦が巡回すれば「大惨事」につながる恐れがあると警告しているという。

私の読み間違いだろうか? 中国の言動はまるで、核開発計画に対する国連決議を無視し、周辺国と米国に対し非難や威嚇を繰り返す北朝鮮のようだ。

これは投資家にとっても憂慮すべき動きだ。軍事衝突が起きれば、アジア経済の統合と成長を阻害し、世界経済に打撃を与える。特に、内需主導の経済基盤がない中国にとっては大きな損害となる。

これは中国が本当に望んでいることなのだろうか?

編集=遠藤宗生

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