「ロボットは必要ない、早く帰れば生産性は上がる」―UN Women事務局次長

UN Women ヤニック・グレマレック事務局次長


谷本: 日本はジェンダーのギャップが大きい国です。日本が学ぶべき国はありますか。

グレマレック:世界には既存の公共政策で良いものがたくさんあります。ひとつの国から学ぶのではなく、国際的ベスト・プラクティスの中から、ウィメノミクスという新しい経済パラダイムを推し進められそうな政策のパッケージを見つけ出してみてはいかがでしょうか。

日本は、この問題への取り組みが非常に遅れていましたが、ここにきて、強い意志を持ち、多くの国々の事例を参考としつつ、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを加速させる独自の方法を見つけるかもしれませんね。成功すれば、第二の明治維新というくらいのインパクトです。頑張って欲しいです。

谷本: 日本における最も深刻な問題のひとつがシングルマザーの貧困です。どうすれば女性の経済的自立を推進できますか。

グレマレック:シングルマザーを含む、経済的弱者の女性が経済的自立を果たすために必要な初期支援サービスのを良い投資と捉え、投入することです。

また、セーフティーネットに頼ることができるシングルマザーは、子どもに良い教育を受けさせ、子どもと自分自身の可能性を十分に伸ばします。私たちは、簡単にできる公共投資などをやめ、人のポテンシャルを高める施策にお金を使うことを投資だと考えるべきです。

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谷本:日本では特に、ジェンダー問題を扱う議論に男性がいつも入っていないように思えるのですが、どうしたら、男性を巻き込むことができるのでしょうか。

グレマレック:私がUN Womenに入ったのはごく最近のことですが、ムランボ・ヌクカ事務局長からチームへの参入を依頼されてとても驚きました。なぜなら私はエンジニア出身で環境保全の大きなプログラムの運営をしており、ジェンダー平等と女性エンパワーメントに関しては個人的に賛同していましたが、ジェンダーの専門家ではなかったからです。

しかし事務局長には、女性のエンパワーメントを次の次元に推進してゆくチームには、ジェンダーの専門家ばかりではなく、広く政策推進能力のあるスタッフや男性が必要だという考えがありました。男性に対しては男性が発言した方が聞いてもらえる場合があるからです。

全員を巻き込み社会を変えて行くためには、全員に説明しなくてはなりません。女性が活躍しても男性が負けるということではない。ゼロサムゲームではなく、双方にとって利益となることなのです。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは女性だけのためではなく、社会全体を利する政策なのです。

そこに投資をする社会は、より豊かに、より健康に、そしてより幸せになる。ジェンダー平等を達成した社会に属する人は女性だけでなく男性も、二度とそれ以前に戻りたいとは思わないことでしょう。ジェンダー平等・女性のエンパワーメントと幸せには強い相関があります。

UN Womenでは、ジェンダー平等を男性に呼びかけるHeForShe(ヒーフォーシー)キャンペーンを展開しています。女性(シー)のために良い社会は、ヒー(男性)にとっても良い社会で、ヒーが積極的に推進していくべきだという意味です。
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インタビュアー=谷本有香 構成=星野陽子 写真=藤井さおり

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