時価総額13兆円が幻に 米ヤフーの栄光と衰退、22年の歴史

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最盛期のヤフーは時価総額が1,250億ドル(約13兆円)を超え、今日のフェイスブックやグーグルに匹敵するインターネット業界の巨人だった。そのヤフーは7月25日、中核事業をベライゾンに48億ドル(約5,100億円)で売却すると発表した。シリコンバレーを象徴する企業の一つが、その歴史に終止符を打つことになる。

ヤフーの事業は、昨年ベライゾンが44億ドルで買収したAOLに統合される予定だ。ベライゾンが業績不振に陥った大手ポータルサイト2社を総額100億ドル近くで買収した狙いは、1億4,000万人のユーザーに向けてモバイルコンテンツを強化することと、広告テクノロジーを手中に収めて広告収益を増加することだ。

「中核事業の売却は、ヤフーが保有するアジア株式の分離と、ヤフーの事業再編を加速させる重要な一歩となる。ヤフーの買収に興味を示した数多くの企業の中で、我々が創出した価値を最も高く評価し、一緒になることで我々のユーザーや広告主、パートナーにこれまで以上のメリットを提供できることを示してくれたのがベライゾンだった」と同社CEOのマリッサ・メイヤーは語った。

変化に乗り遅れた巨人、ヤフー

ヤフーが凋落した最大の要因は、シリコンバレーで圧倒的なリーダーとしての地位を築きながら、検索やソーシャル、モバイルなどの新たなテクノロジーの波に乗ることができなかったことだ。

今でも何億人ものユーザーがヤフー上でニュースや天気予報、メール、ゲームなどを利用しているが、ビジネスモデルは10年前から何も変わっていない。それでもPC時代には優位性を保つことができていたが、スマートフォンアプリの時代が到来してユーザー離れが加速した。

ヤフーの起源は、1994年に当時スタンフォード大学の学生だった同社共同創業者のジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが立ち上げた「Jerry and David’s Guide to the World Wide Web」というディレクトリサービス。人々がダイヤルアップでインターネットに接続するようになると急成長を遂げ、1996年にIPOを果たした。ドットコムバブルさなかの2000年1月には、株価は最高値となる500ドル(株式分割後換算で125ドル)を記録した。

しかし、ヤフーはポータルサービスを超える事業を生み出すことができなかった。バブル最盛期には45億ドルを投じてジオシティーズ(Geocities)を、57億ドルを投じてブロードキャスト・ドット・コム(Broadcast.com)を買収したが、創業間もないグーグルやフェイスブックの買収チャンスを逃したことが最後まで響いた。

今日、ヤフーの検索シェアは僅かしかなく、その後買収したSNSのタンブラー(Tumblr)はのれん代を2度に渡って減損処理するなど、買収効果を全く発揮できていない。
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編集=上田裕資

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