警察にこのロボットを提供したメーカーはどの企業なのか。投入されたロボットはイラク等の戦地で用いられた陸上型無人機(UGV: Unmanned Ground Vehicle)と見られ、その最大の製造元の一つがエンデバー・ロボティクス(Endeavour Robotics)だ。同社は掃除機ロボット、ルンバの製造元であるアイロボット社の軍事部門として始まり、今年4月に同社から独立したばかりだ。
ルンバのルーツは地雷除去機
アイロボット社は2002年に地雷除去ロボット向けに開発したナビゲーション技術をベースにルンバを開発し、その販売で大きく飛躍。その後、米軍のイラクでの展開に伴い軍事部門の売上を伸ばし、2009年時点の売上構成は民生部門が55.5%、軍事部門が44.5%となっていた。
エンデバー・ロボティクスの広報担当者はフォーブスの取材に対し、ダラス地区の政府機関で製品が使用されたことは認めたが「警察に直接、製品を納入したことは無い」と述べた。
米軍がイラクやアフガニスタンで使用した無人機が、作戦終了後に米国に送還され、警察の手に渡ったことはジャーナリストのアッシャー・ウルフによっても確認されている。ウルフはダラス警察が、かつて米陸軍がイラクとアフガニスタンで使用した、同様の無人機MARCbotを保有していたことも突き止めている。
MARCbotの製造元、Exponent社の副社長、アンジェラ・ミヤーは「軍事作戦の終了後、未使用のロボットは米国の警察の手に渡った」と述べている。ミヤーは過去に、警察からその操作方法について問い合わせを受けたことも認めた。
海外で使用された軍用の無人機は米国内の警察や、各地の軍施設に再配備されている。このオペレーションは米国政府の「1033 Program」と呼ばれる手続きを経て行なわれた。
ダラス警察のデビッド・ブラウン署長は今回のロボットの使用に関し「我々にはそれ以外の選択肢が無かった」と述べた。しかし、犯罪容疑者の排除にロボットを使用することには大きな倫理的課題が残されている。今回の件が前例となり、ロボットを用いた容疑者の殺傷が合法とされたならば、警察は容疑者を逮捕するよりも、爆殺すること選ぶケースが増える可能性もある。