QRコードでアップルに対抗、顧客を囲い込むウォルマートのデジタル決済

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アメリカ人の多くは、ウォルマートに対して好きになりきれない屈折した思いを抱いている。品揃えが豊富で価格も安い一方、混雑したレジではいつも待たされる––。そんな中、同社がより快適な買い物体験を提供するために導入するのがデジタル決済だ。ウォルマートはスマートフォン決済システム「ウォルマート・ペイ(Walmart Pay)」を全米4,600店舗に導入する。

アップル・ペイやサムスン・ペイ、アンドロイド・ペイがNFCによる決済機能を用いているのに対し、ウォルマート・ペイはQRコードをレジでスキャンする方式を採用した。何で今ごろQRコードなのか? と疑問に思う人も居るだろう。「過去の遺物」と形容されるQRコードが、思わぬ形で陽の目を見たとも言える。

ユーザーはクレジットカードやデビットカードの情報をウォルマート・ペイのアカウントにリンクさせ、レジでQRコードをスキャンするだけで支払いを完了できるというのがこの決済の売りなのだ。

独自決済で顧客を囲い込む

アマゾンに次ぐ世界第2位のEコマース企業であるウォルマートは、電子市場「マーケットプレイス」の拡大にも取り組んでいる。調査会社eMarketerは、ウォルマートのマーケットプレイスが2020年に流通総額6,000億ドルを突破すると予測している。

ウォルマートが独自決済を立ち上げた背景には、顧客の囲い込みを図る狙いがある。ウォルマート・ペイの導入で顧客の消費行動を分析し、マーケットプレイスとアカウントを統合することが可能になる。

セキュリティ対策でもウォルマート・ペイは他社と異なる仕組みを導入している。アップル・ペイやサムスン・ペイ、アンドロイド・ペイの場合は実際のカード番号の代わりに16桁の数列を発行し、店舗に知らせている。一方、ウォルマート・ペイではカード番号や決済情報は安全なデータセンターに蓄積され、ユーザーのスマートフォンや店舗のレジ端末には保管されない。

QRコードのハッキングを恐れるユーザーがいるかもしれないが、レジでの支払い時にスキャンすることは極めて困難であり、クレジットカードやデビットカードを読み取り機にスワイプするのとリスクの度合いは変わらない。

筆者は数ある支払い方法の中からウォルマート・ペイを選ぶつもりだ。その理由は2つある。まず、筆者は名刺にQRコードを印字しているほどQRコードを愛する人間だからだ。また、筆者はかつてウォルマートで働いたことがあり、言葉では説明できないほどの愛情をウォルマートに抱いている。日頃からウォルマートで買い物をしており、生鮮食料品から照明器具、雑貨、飲料まで揃う店はウォルマートを除いて他にないと考える。

だからこそ筆者はこれからも他の多くのアメリカ人と同様にウォルマートで買い物をし、レジでQRコードをスキャンしてもらうつもりでいる。

編集=上田裕資

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