「誰かに自慢できる」製品が人を魅了する UPQ中澤優子

UPQ代表取締役 中澤優子氏

世の中がIoTに沸く中、「ものづくり」に魅了されていた中澤優子は2015年6月、ハードウェアのスタートアップ「UPQ(アップ・キュー)」を設立した。作っているのは、スマホやデジカメ、ディスプレイなどのいわゆる家電製品。当時は会社設立からわずか2か月で、17種類24製品をリリースしたことでも話題となった。

中澤は新卒でカシオに入社。ものづくりの楽しさを知ると同時に、もっと時代に合ったものを作るために30歳で起業した。カラーやデザイン、そして何より「面白さ」を大切に、次々と新製品を生み出す彼女に、企画のコツ、今後の展望を聞いた(前編はこちら)。


谷本有香(以下、谷本):中澤さんが企画を立てる際、消費者ニーズを把握するためにどのようなことをしているんですか?

中澤優子(以下、中澤):新しいアイデアのために直接アンケートを採ったり、インタビューすることはありません。企業の中でそれは無駄だと感じることが多かったからです。その代わりに、よく人間観察をしています。例えば、自分のカフェで、パンケーキを食べるために並ぶ人を観察して何を考えているんだろうと想像したり、何を喋っているのか耳を傾けているだけでも、自分との相違点や共通点が見えてきます。

谷本:観察から知見を得て、それを元に製品やカフェを作って成功されている、その目利き力はどのように培ってきたんですか?

中澤:目利き力があるとは思っていませんが、プロダクトマネージャーや経営者としての視点は、自分で培っていけるものだと考えています。

カシオ時代、上司から企画を立てるよう指示されたときに「アンケートを採って集計してもそこに企画の答えはない。大事なのは、企画した製品を出したときに“ターゲット層が食いつくもの”を考えることだ」と言われたのが強烈に印象に残っています。

顕在化しているニーズではなく、潜在ニーズを探りなさいと教えてくださったんですね。価格を聞く前に「欲しい」と思わせるものを作ることができたら、企画としては勝ちだよ、と。

さらに、本来のターゲットの周りの人にも「ちょっと買ってみようかな」と思わせるものを作ることができて、はじめて一人前だと考えているんです。実際、そう思えるものって世の中にあまりないですよね。その難しさを最初のキャリアで理解させてもらったことが、今でも企画をする際に活きています。

谷本:今、日本の消費者が「欲しい」と思うもののキーワードは何だと思いますか?

中澤:「誰かに一言で、つまり、簡単に自慢できるかどうか」だと思ってUPQではこのポイントを大事にしています。特に家電製品は、どのメーカーのものも横並びで、よくよくスペックを比べないと何がすごいのかもわからない時代になってきているので、写真だけでも良くて、フェイスブックやインスタグラムに投稿したら「いいね!」が付くかどうか。SNSウケが大事と言っているのではなく、「これすごいでしょ」とみせて、「すごいー!」と誰もが反応できることが大事だと考えています。

だからUPQでは、余計なスペックはそぎ落として、面白さや特徴など、手に取ってくれた人が、話題にしやすい際立ったポイントがあるかどうかを最も重視しています。
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構成=筒井智子 写真=寺内 暁

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