いまに合った「ものづくり」で、時代を動かす起業家 UPQ中澤優子

UPQ代表取締役 中澤優子氏


昔のハードウェア、例えば「ファミコン」も立派な精密機器ですが、遊んでいてフリーズしてしまっても「しょうがないな」とカセットを外して、フーっと息を吹きかけて埃を取って、とやりましたよね。でも、いまはPCがフリーズしたり、携帯電話の電波がつながらないだけで、ものすごくイライライするじゃないですか。ファミコンはゲーム機だからという見方もありますが、昔のファミコンとの距離と、現代のPCや携帯電話との距離は全然違うように感じます。

技術が進化して、それが製品に盛り込まれれば盛り込まれるほど、人間との距離は遠くなってしまう。昔、ゲームに仕込まれた隠しコマンドを発見するのが楽しかったように、ものを介して作る側と楽しむ側のコミュニケーションが成り立っていました。そんな関係性が良いなと思っているんです。

技術が進化したからこそ、もっと「仕掛け」を盛り込むことができると思っています。これからUPQが作る製品にこの関係性や面白さを活かしたいですし、次の世代に伝えていきたいと強く思っています。

谷本:ゼロから何かを作り出す過程では産みの苦しみのようなものもありますよね。その苦しみさえも楽しめるのは、何か原体験があるんですか?
a
中澤:2歳から習っていたバレエでしょうか。一瞬しかない本番に向けてチームのみんなと練習を積み重ねるということをしてきました。カシオに入社して、ものづくりの現場も共通点が多いと気づかせてもらえたことも、ものづくりに没頭するきっかけになっていますね。

企画案を考えて製品を世の中に出すまで2年ぐらいかかるのですが、いろいろな人に「本当にこれでいいの?」と常に問いかけられ、判断を求められます。私の回答や判断がぶれてしまうと、いつまで経っても製品は完成しません。たとえ何の確証もなくても「こうです」と言い切らないと、周りも迷ってしまうんですね。

だから、最後まで旗振り役でいることが大事ですし、不安を背負うのは自分一人だけという覚悟も必要。発売後にお客さんから「いいね」と言ってもらえて、ようやくホッとできる。その繰り返しです。


中澤優子◎1984年生まれ。中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機株式会社にて、携帯電話・スマートフォン商品企画に従事。「830CA」「CA007」「EXLIMケータイ」「MEDIAS W」などの企画開発に携わる。 退職後の2013年4月、秋葉原にカフェを開業。オリジナルケーキ等の商品企画から製造・経営まで、すべてに携わる。 2014年10月、食をテーマにしたハッカソンに参加し、IoT弁当箱「XBen」を企画・開発。同年12月には、経産省フロンティアメイカーズ育成事業に採択される。 2015年7月、株式会社UPQ代表取締役に就任。2か月で17種類24製品を取り揃え「UPQ」ブランドを立ち上げる。 2016年2月、ブランド第2弾となる製品群をリリース。日々ものづくりに没頭している。

構成=筒井智子 写真=寺内 暁

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事