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2016.06.29

フィンテックバブル、崩壊の懸念 「顧客の9割が高リスク層」の現実

GSO Images / gettyimages

トレンドが目まぐるしく変わるスタートアップの世界で、フィンテックほど盛り上がりを見せている分野はないだろう。中でもレンディングクラブ(Lending Club)やオンデック(OnDeck)などのオンライン融資会社にはこれまでに何十億ドルもの資金が投じられてきた。

これらの企業は既存の融資サービスを破壊し、特に中小企業向け融資のあり方を変えることを強調してきた。しかし、専門家の多くはバブルが既にはじけ、ごく一部の先進的な企業しか生き残ることができないと考えている。フィンテック業界にとってはこれからが本当の試練の始まりだろう。

借り手のデフォルトリスクが上昇

オンライン融資会社を利用する大きなメリットは、多重債務者が借金を一本化し、なおかつ従来よりも金利を引き下げることができる点だ。クレジットカード・ローンの返済に苦しむ多くの個人や事業者にとって、オンライン融資会社は借金苦から逃れるために欠かせないサービスであり、その社会的な意義の大きさも手伝ってオンライン融資業界は大きな成長を遂げることが期待された。

しかし、実際には多くの借り手がクレジットカード・ローンを返済したあとに再び借金をし、ローン残高が増加するケースが頻発している。事態を悪化させているのが、オンライン融資会社の杜撰なデータ管理だ。彼らはリアルタイムで顧客管理を行っていないため、借り手のデフォルトリスクが短期間で急上昇した場合にもその情報が伝わらず、複数の貸し手が騙される問題が起きている。これは「stacking(ローンの積み重ね)」と呼ばれ、業界全体で大きな問題となっている。

この結果、業界リーダーのレンディングクラブでは、この1年で不良債権が急増している。同社はデフォルトが発生しているのは信用ランクが最も低い層向けのローンに限定されるとしているが、最初にデフォルトを起こすのは常に最下層のセグメントであり、今後は上位の顧客層にも拡大する可能性がある。

このように、オンライン融資を最も多く利用しているのはデフォルトリスクが一番高い借り手であり、経済環境が悪化すれば業界のビジネスモデルが崩壊する危険性がある。

問題の解決には時間を要する

問題を解決する最善の策は、リアルタイムで借り手をモニタリングすることだ。そのためのテクノロジーは既に存在し、筆者が経営するBodeTreeでも活用している。これが実現すれば貸し手は借り手のローン残高が増加していないか確認することができ、デフォルトリスクを大幅に低減することが可能になる。

しかし、解決法がわかっていても実行するのには時間がかかるだろう。ここ数年のフィンテックブームがもたらしたバリュエーションの高騰や事業運営コストの増大により、企業の多くはあらゆる手段を講じて成長を追求し、投資家にアピールしようとしている。こうした近視眼的な姿勢によって、長期的な問題への対策が後手に回っているのだ。
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編集=上田裕資

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